佳上成鳴 カクヨムコンテスト参加中!

プロローグ

「ASPHODEL-5?」


 佳伊が沙耶を見る。

 渡された書類にはそう書かれていた。広々とした部屋に置かれたデスクには書類が山のように積んである。

 佳伊は黒髪の美青年であるがその整った顔は難しそうな表情だった。

 佳伊の前に立っている沙耶と呼ばれた女性は表情を変えずに立っていた。

 白衣を着たくせ毛の沙耶はその言葉に続いた。


「はい、今回の病状から言って現在のどの病気にも当てはまりませんでした。新種の病気と思います。」


「で、あ…アスフォデル-ファイブと名づけたんだね」


 書類に目を通しながら言った。


「ASPHODELは死の国に咲く花のことを言うそうです。」

「へぇ5は?」

「現段階で5段階の症状から」

「そうか。」

「はい。」


 沙耶は無表情のまま続けた。


「これから世界的に増えると考えられます」


 佳伊は顔をあげた。


「空気感染なのか?」

「いえ、突発性です」

「なのに、増えると?」

「予想だけで断言は出来ませんが」


 書類を机に放って佳伊が沙耶を見た。沙耶は真っ直ぐな瞳で佳伊を見つめた。次の言葉を待っているのだ。


「そこまで沙耶がいうなら「隼」で重点的に調べてくれ」

「ありがとうございます」


 沙耶は佳伊がそう言ってくれると分かっていたかのように微笑み、ペコリと頭を下げ、出て行った。

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