ご対面


校内は極めて普通だった。

明かりがないので少し暗いがそのくらいだ。

黒谷と真白井さんの間を歩いているからかあの異形にはあわない。

もしかしたら、真白井さんが全部倒してしまったのかもしれない。

そんなことを考えながら階段を登り二階に向かう。

二階にたどり着いた時、黒谷が一つの教室を指差す。


「あそこか?」


「あぁそうだ、真白井、警戒を解くなよ。礼賛、杖を構えろ」


僕たちは教室の扉の前に立つ。


「開けるぞ、俺が合図するまで攻撃するなよ」


黒谷は扉に手をかけ、勢いよく開ける。






その空間は異様としか言いようがない空間だった。


赤、緋、赫、丹


それらに混ざった


黒、黑、玄、涅


アカグロくグロテスク。


白い壁、少し緑がかった黒板、たくさんの生徒が座っていたであろう椅子と机、生徒が描いたであろうお花の絵。

それらが全て、肉と血と、もはや何かもわからない身体の一部によって上塗りされていた。


腐敗臭、腐卵臭、それに、死臭。


それらが蔓延する空間。


そして教室中央には球体が浮遊していた。


その球体の中には間違いなくあった。


一人の小学生の姿が、


しかし、あれは、


「黒谷、あれ」


黒谷も真白井さんも、その球体を見つめていた。


「あぁ、間違いない」




「死んでるよ、あの小学生」



球体の中にいる、暴走者の小学生は、四肢をだらんと垂らし、目を開いていた。

しかしその目には光がなかった。

口は開いていている。

近づいて脈をとるまでもない。

脈を奪るまでもない。

すでにその子は死んでいる。


「どうするんだ黒谷」


黒谷はスマホを取り出し電話をかける。


「こちら黒谷、殺害対象の死亡を確認。突入前からすでに死亡していた模様。そのため作戦を殺害から死体の破壊に変更する」


何度か応答をしたあと黒谷は電話を切りスマホをしまう。


「礼賛、真白井、一度校舎の外に出るぞ」


「え?」


「校舎ごと破壊することになった。あんま俺から離れんなよ」

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