作戦決行


※ 神視点


「頸梨さん、作戦通りにお願いします」


「おっけー」


体育館の扉の前でこそこそと二人は話していた。

それだけの会話。

それだけの言葉が終わっただけで事は起こった。

頸梨が杖を取り出し、その杖先を扉に向ける。

ドォン!という音と共に扉が打ち破られる。

体育館内にいた五人の魔術師。

それらは歴戦の猛者というわけではないが、戦闘を主とする魔術師である。

突然のことではあったが対応しようという考えに至るまでは早かった。

具体的に言えば、五人の魔術師は一斉に杖を取り出し各々が体育館のたった一つの扉に向ける。

しかし、そこから魔術の行使まではしなかった。

できなかった。

杖を携え侵入してきた一人の少女に、全員が見惚れてしまった。

魅了されてしまった。

誰一人として魔術を行使しようとしない。

襲撃されているというのに誰一人として動かない異様な空間。

その空間の沈黙は魔術によって破られた。

誰も動かない事を確認した一人の新人魔術師が体育館内に突入する。

国枝礼賛、今回の作戦の発案者だ。


「「マレフィキウム魔女の悪行」」


礼賛、そして頸梨の放った魔術がキャットウォークにいた二人の魔術師に命中し命を奪い去る。

そこからやっと魔術師三名は動き始めた。

何が起こったか理解した魔術師三名が杖先を侵入者二名に向ける。

しかし遅かった。


一瞬、そこの時間が止まったかのように誰もが動きを止めた。

先程まで魔術師五名を魅了するほどの美貌を持っていた少女に、足首より下は

頸梨は翼を羽ばたかせながら礼賛を抱え体育館の外に飛んでいった。

数秒間、何が起こったかわからなかった。

しかし一人が正気に戻り声を張り上げる。


「奴らを追うぞ!着いてこい!!」


最初の攻撃で戦力が五人から三人に減ってしまった。

これ以上籠城しても無駄だろう。

外に出て奴ら二人を殺して根城を移す。

そういう考えがあった。

魔術師三名は体育館の外に出る。

その瞬間、その作戦が失敗だったと気づく。


マレフィキウム魔女の悪行!」


その魔術が、一人を撃ち抜いた。

奴らは飛んでいたのだから上から攻撃がくるだろうと、上空への魔力探知に集中していた三名。

その一人を撃ち抜いたのは、体育館の陰に隠れていた礼賛による攻撃だった。

意識が魔術を放った礼賛に向かう。

だが、それすらも罠だった。

瞬間、体育館の屋根で待機していた頸梨が飛び降り、その鉤爪で一人をグシャリと踏み殺した。

残った一人だけの魔術師。

それが手のひらを頸梨に向けながら何かを言おうとした、その時、


マレフィキウム魔女の悪行


礼賛による無慈悲な攻撃が貫いた。

自分たちが殺した魔術師の身体を眺めながら礼賛は言った。


「何点ですか?頸梨さん」

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