問-おねとショタに恋愛以上はできるのか?

ほげ〜船

第1話 告白

「ぼくの、およめさんになってください!」

 八月のある日、通学路として通る人気のない歩道橋の上。

 私…近路まわりは、小学生くらいの見知らぬ男の子に突然告白された。

 最初は何かの勘違いだと思った。だからそのまま素通りしようとした。でも、その子の視線は明らかに私の姿をとらえていた。

 私は間抜けな表情をしながら、「それって、私に?」と聞いた。彼は頬を赤らめながら、迷わず首を縦に振った。

「前からここで見かけて、立ちふるまいが凄く綺麗な人だなって。だからぼく、お姉さんがいいんです」

 へえ、そーか、ふうん…なんて私は答えた。できるだけ冷静、クールにね。

「…ちょーと待っててね。おねーさんにも、時間ってのがほしいかな」

 とりあえず、私にできるその時点での言葉を言った。男の子はずっと期待のまなざしで私を見上げてくる。

 ちなみに内心はというと。

 ……マジかよっ!?何この状況!!およめさんっ、お嫁さんて!マジかよっ人生初めて受けるプロポーズこれ!?

 うん、慌ただしい。てか慌ただしくなくいられるかっての。

 華の女子高生になって何ヶ月か。小中とずーっと二軍女子だった私は、高校でもまさしく二軍女子なオンナノコだった。

 だからなんだ、その。

 サッカー部の内藤クンかっこいー、だとか、バスケ部顧問の堀内センセイまじイケメーン、みたいな友達の会話に混ざるくらいしか恋愛的経験(経験?)しか積んでこなかったわけで。

 明らか年下の子に告白されるなんて、ちょっと想像してないわけで。

 そんなこんなが重なって、私は固い笑顔で口ごもるしかなかった。

 すごい…今なら菩薩になれそうな気がする。いや菩薩ってか、表情を変えない菩薩像に。私のこの菩薩的笑顔で、きっと彼も満足して帰ってくれるだろう。

 でもそれは悪手だった。

 見ると男の子の目は潤んでいて、今にも泣きそうになっている。

 私はもちろん慌てた。もうずっと慌ててばっかりだ。

 いくら今は人がいないといえ、子どもの泣き声が響けばわが国の誇る優秀なポリスメンが黙っていない。事情を話す猶予は与えられると思うけど、もし噂が立てばクラスで浮いてしまうのは確実。

 だから今後の安定した生活のためにも、私はここで何らかの可及的速やかな対策を判断し検討に検討を重ね加速させて言葉をどうにかまる〜く収め

「…ごめんなさい、ごめんなさい」

 脳内でいくつもの案が出されたが、それらは一瞬にしてはるか彼方へ葬られた。男の子の目からは、大粒の涙がぽろぽろと溢れている。

 ……やべえ。

 頭がまっしろになって、「もう、後先考えないほうがいいな」という結論だけが秒で可決された。

 私は軽くしゃがんで、顔の位置が男の子の目線と同じ高さになるようにする。

 私は、ふっと息を吐いた。

「わかった、今から私はお嫁さんね。結婚するの。…よろしくね、あなた」

 涙で顔をぬらした男の子は、どこか安心したような表情を一瞬だけ見せて、その後にぼっと紅潮しながら、首を振って答えた。

「…よっ、よろしくおねがいします!」

 そのとき、私は始めて男の子の顔を正面から見た。

 ふーん。

 内藤クンも堀内センセイも、四、五年後にはうかうかしてらんないね、と思った。

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