モノクロな世界に、色が灯る

言守つぐみ

プロローグ

 私の死に場所に選ばれたのは、とある寂れた屋上だった。

 何か思い入れがあったわけではない。たまたまだ。

 両親の喧嘩の原因で、しかもそれを止められない自分が、もう嫌でたまらなかった。

 彼らの乱暴な声が刃物となり、私の心を引き裂いていく。

 世界は灰色の雨で塗りつぶされ、息をするたび胸が痛い。

 ――だから、ここで終わらせる。


 そんなとき、雨音に紛れて、彼の声が後ろから響く。

 『死ぬな』とも『生きろ』とも言わずに、ただただ会話を交わした。

 それだけのことで、私の世界に色が差した。


♢♢♢


 あなたには、「もう死にたい」「これ以上生きていくのはつらい」と、真剣に考えた経験はありますか?

 これは、すべてに絶望していた私が、不思議な少年と出会い、希望を取り戻すまでの物語。

 生きる意味や命の価値を、温かく教えてくれる物語。


 人によっては、綺麗事のように感じるかもしれない。

 けれど、今の私は、そんな綺麗事があったからこそ生きている。前を向いていられている。


  何かに悩み、何かに縛られている誰かが、ほんの少しでも、楽に息ができるように。

 私も彼のように、誰かに希望を繋げられるように。


 これは、私からあなたへの贈り物。

 雨上がりの空のような輝きと、ありったけの優しさを込めて。

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