chapter2「立体駐車場」

//SE 電話の呼び出し音(短く)

//SE 受話器を取る音


……もしもし、刑事さん?


やった、刑事さんだ♪


ふふっ。ねぇ、第二の爆弾……。

今度は、ちゃんと処理できたみたいだね♡


すごいなぁ。どうして、わかったの?



――



//SE 反響して聞こえる自動車の走行音



車の、音……。


やだ、聞こえてたんだ♡

刑事さん、耳が良いんだねぇ。


うん。うんっ……ふふっ、そうだよ。

だいたいは、正解かな。


刑事さんの推理どおり。


噴水広場を一望できる高さがある施設、

駅前では、そんなにないよね?


立体駐車場も、その一つ♡


刑事さんと電話してるときに――

私がいた階に、車が入ってきたの。


だから、あわてて電話を切っちゃった。

それで、刑事さんにバレたんだね……。


うん……でも、一つだけ、間違ってる。


刑事さんの推理は間違ってるよ?

ちょっとだけ、ね。


//SE 少女が少し拗ねたように笑う


私が「成人してる」って言ったやつ。

それは、間違いだから……♡



私は未成年。



ううん、共犯なんていないよぉ。


私は自分の車で立体駐車場に入って、

あそこから広場を監視してた――

そこまでの推理は、正解。


刑事さんの推理は、ほとんど合ってる。


でも――車に乗ってるからといって、

成人してる――とは、限らないよね?


ちがうちがう。


そうじゃなくて……

車の運転には免許が必要、という前提。


その前提を、疑ってみてよ♡


//SE 少女が無邪気に笑う(ふふっ)



(耳元でささやくように)

爆弾魔が、法律なんて気にするわけないじゃん♡



無免許で運転してたの。

だから、私は未成年だよ♪


……たしかに、ヒントの出しすぎかもね。


でも、さ……

刑事さんに、私のこと『オバサン』って

思われるのは……ちょっと、イヤだった。


だから、ついヒントを出しちゃったの。

これで捕まったら、私、バカだよね?



//SE 静かに刻まれる、時計の秒針の音



でも、刑事さんが推理してくれて……うれしかった。

私のこと、ちゃんと考えてくれてるんだ、って……。


私のことは、まだ思い出せないみたいだけど。


ねぇ、刑事さん。

次の爆弾はね――まだ、爆破しないよ♡


今晩は、よく眠っておいてね。


ちょっとだけ、サービス……。

睡眠不足は、身体に良くないもん。


//SE 紙をめくる音


さぁて、次のターゲットは――

今度みたいに、阻止できるかなぁ?


//SE 少女がささやくように笑う(くすくす)


ばいばい、刑事さん。

また、電話するから。


次こそ……私を逮捕できるといいね♡


//SE 電話が切れる音

   ツー、ツー、ツー。

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