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「おばさんから電話がかかって来てさあ、頼まれたんだよ」
ダイニングテーブルの前に来ると、ユキ姉は言った。
「何を?」
僕は聞いた。
「おばさん、こう言ったの。
『そう言えばカラオケに誘われる前、買い物に行こうとしてたんだよね。冷蔵庫の中、ほぼカラっぽなのよ。ユキちゃん悪いけど、なんか買って行って、あの子たちにご飯作ってやって。バイト代弾むよ。もちろん食材費は別。好きなもの好きなだけ買っていいよ。よろしくね~』
ってね。そりゃ引き受けるに決まってるでしょ。ちなみにカラオケBGMは、愛のメモリーだったね」
♪ ふっふふ~ん。ふふんふふ~んふふ。
ユキ姉は、気持ちよさげにハミングする。
「へえ。そうなんだ」
僕は冷静に言う。「そりゃ引き受けてくれたのはありがたいけど。でも、ユキ姉、この量、一回の夕食分の食材とは、とても思えないけど」
「ふふん! まあ中を見てみなよ。ちはやもひかりちゃんも大喜びするよ」
おお!? なんだ、その自信は。まさか、サーロインステーキだとか、しゃぶしゃだとか、そういうもん作ってくれる気なのか!?
ちはや「ええ!? 何々? 何入ってるの?」
ひかり「わくわくするね!」
ユキ姉と一緒にダイニングテーブルの前に来ていたちはやとひかりが、二つの袋に手を伸ばす。
ちはや「わああー……い……」
ひかり「ん、んん?」
がさがさと袋から物を取り出して行く二人だったが、明らかにテンションが下がって行く。
「……ユキ姉。これで、何を作ってくれるんだよ?」
ダイニングテーブルに並べられた食材を、遠くの山並みを見るような目で眺めながら、僕は尋ねた。
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