第10話 寝不足は失敗のもと(3)

「お前、あ、亜人か」

「そうだ。ばれたくなかったけどな」


 私は倒れた大男の腹を、足で一発踏みつける。男は「うっ」という声を発したが、そのまま静かに寝てくれたようだった。


「さて、お前はどうするかな」


 見下ろす私と、驚いたのか尻餅をついたやせ型の男。その男は震える手でスーツの内側に手を入れた。

 私はそれを見ると、すぐに彼に駆け寄り手元を蹴り飛ばす。


「銃か?」

「ひぇ!」


 男の手から弾かれた拳銃が、クルクルッと回りながらビルの壁へとぶつかった。

 こんなところで発砲したらすぐに捕まることも分からないのか。

 トウキョウの特別区はいたるところで、防犯カメラやマイクが設置されている。警察なんかきたら、面倒に巻き込まれるだけだ。


「頭に穴を開けるかな」


 私はそう言って銃を拾うと、彼の頭へと突きつける。リボルバー、そのハンマーをゆっくりと起こす。


 ……。


 彼はその緊張感に耐えられなかったのか、そのまま気を失った。


「こちらニーイチ、ターゲットの仲間二人に襲われましたが確保したので回収願います」

「ああ、わかった。ターゲットに気づかれてないか?」

「はい」

「ターゲットの位置を確認する。その場に待機しておけ」


 私はリストに載っている亜人だ。普通の生活ができるわけがないだろ。

 右手を強く握り、唇をぐっと噛みしめた私だった。

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