第二十二話 朝
「ん・・・」
まだ朝日も登らない頃、私は起床する。これが毎日の習慣だ。顔を洗いながら昨晩のことを思い出す。
昨日は食堂に行った後も予想通りだったわね。周りかたは煙たがれ、冷たくあしらわた。女性職員は少ないから、仲良くしたかったんだけれど。でも、シェリーの態度は変わらなかった。
「あの人達の態度何なの!この土地出身の人ならまだしも、他の人まで貴方を下に見て!まあ、それでも許せないけれど!」
「シェリー、落ち着いて」
「落ち着いていられないでしょう!私、今すぐ文句言ってきてやりたいわ」
「大丈夫だから」
本当に大丈夫なのだ。もし、シェリーがあの人達に言い返したり、注意したら、彼女も同じような態度を取られるだろう。ただでさえ、新人なのだから。彼女には傷ついてほしくない。そもそも、私といる時点で周りの態度は冷たいはずだ。
「ねえ、シェリー」
「なに?」
シェリーが頬を膨らませて、振り向く。リスみたいでかわいい。
「貴方が私と友達でいてくれるのは嬉しいわ。まだ、会ったばかりなのに、こんなに私に良くしてくれて・・・」
「別になんてことはないわ!」
「ありがとう。でもね、しばらくは外で私と話さないほうがいいかも」
「どうして!?」
「貴方までまきこまれてしまったらやだし」
「でも・・・」
優しい子だ。こんな優しい子があの悪意に似たものに触れてしまって、傷つくなんて許さない。私は一度手に入れたもの、、、絆はことさら大事にする人間よ。要するに身内には甘いってことね。
「部屋の中ではいっぱい話をしましょう。それにいずれか外で話せるようにもなるわ。私がそうするから、しばしの間よ」
「本当に?大丈夫なの」
「ええ」
「うん、わかったわ。なにか手伝えることがあったら言ってね」
シェリーは味方になってくれたけれど、他はそうもいかないだろう。どうやらシェリーは王都からそう遠くない地の出身だったみたいだし。これから大変になりそうなのは確実ね。廊下に出てみたけれど、まだ人の気配が感じられない。まあ、こんな早朝だから。日課になっている剣と魔術の稽古をしたいのだけれど。良さそうなところはあるかしら?そうね、寮の裏にちょうど良さそうな裏山があったから、そこにしてみようかしら。
「よし、ちょうど良さそうな岩があるわね」
本当に訓練にちょうど良さそうな岩だ。私はそのへんに落ちていた枝を拾う。今日のウォーミングアップはこれね。この枝を使って一太刀でこれを切ること。
「えっと、、、一応、防音・侵入禁止結界も貼っておいて」
正直、この訓練方法は普通ではない。それこそ、見られたら即危険人物扱いだ。私はただのか弱い文官なのに、、、。まあ、これを貼ったら、絶対バレないだろうけれど。
「付与魔術・耐久強化、身体強化」
念の為、全て詠唱しているけれど、実は普段はもっと短い。でも、私は攻撃魔術向きだからすこし心配なのよね。さて、集中、集中。岩の弱そうなところはどこかしら。
風がそよぐ。まるで私そのものが自然と一体化しているみたい。今日は調子がいいわね。
ああ、そこか。
「ハッ!」
掛け声と同時に岩が割れた。今日は絶好調ね。
山から帰ると、ちょうどシェリーが起きたところだった。どこに行っていたのよというシェリーに対して、裏山に散歩に行ったのだといえば、心配してくれた。学園出身なことを伝えたら、少し黙り込んだけれど。学園の生徒の必修科目に魔術がある。だから、必然的に学園卒業生は魔術については相当高いレベルなのよね。そもそも、平民なのに学園出身であることも驚かれたけれど。食堂で針のむしりになりながら、ご飯を食べ、シェリーとは別れた。
どうやらシェリーは財務課所属らしい。第一志望の課だったみたいだし、希望が通るってことは、相当、優秀なんだろう。
さて、私は私の仕事場へいかないとね。
<あとがき>
更新、遅れまくってすみません。今後も正直、近況ノートで宣言したペースで書くのは難しいかなって思っています。さすがに今回ほどは間があかないようにはしようとは思いますので、今後ともよろしくお願いします。そういえば、先日まだ3年も使っていないスマホが壊れました。ショックです。
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