隔世遺伝のホットケーキ
智月 千恵実
第1話
私のホットケーキ好きは、デパートの最上階にあるファミリーレストランに起源を持つ。
そこは、小学生だった私にとって推し活の場であり、またセレブを味わう特別な場所でもあった。
注文するのはいつも、こんがりときつね色に焼きあがった満月みたいなホットケーキ。
三回に一回くらいは、色とりどりのフルーツが添えられたプリンアラモードとのセットを頼むこともあった。
毎回ではないのは、セットのほうが少し値段が高いので、小学生ながら節約しなければという思いがあったような気がするが、詳しいことは覚えていない。
焼きたてのホットケーキが運ばれてくると、最初に目に入るのは少し溶け出した四角いバター。姿勢を正して、メイプルシロップが入った銀のミニピッチャーを持ち上げる。
絵を描くようにメイプルシロップを流していくと、一瞬で周りが甘い空気に包まれる。
私は慣れないナイフとフォークを厳かにホットケーキに差し込んでいくのだ。
祖母との買い物をメインディッシュと位置付けるなら、このホットケーキ時間はデザートという訳だ。
ファミリーレストランに行く度に、私はこのメニューしか注文しなかった。
妹もまた、私の真似なのか、自分の意思なのかは分からないが、ホットケーキ以外のものには見向きもしない。
祖母は、「たまには違うものを食べたらいいのに」と困ったような顔をしていた。
次に来るときにはそうしようと思っても、実際にはショーウインドーのホットケーキサンプルだけを食い入るように見つめていた。
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