第二話

 恰幅の良い男が手続きを終えた後、馬車に乗ってダークフォレストに行くことになった。馬車は何度も乗ったことはあったが、今回乗る馬車は一際大きなものだった。

「えぇ……、デカぁ……」

「ほかの国にも行く予定なので、このくらい大きくないといかんのです」

 男はそう言って笑って見せた。

 ちなみに、馬車の乗り心地は最悪だった。ものすごく揺れて吐きかけたため、揺れの小さな馬の上に乗せてもらった。乗ろうとしたときに馬から一発蹴りを入れられたが、あとはすんなり乗せてもらえた。


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「そういえばなのですが、なぜあなたは一人で旅をしているのでしょうか?」

 男が話しかけてきた。

「あ~、もともとパーティは組んでいたんですよ?でも、仲間が強すぎて、ついていけなくなっちゃったんですよ。その時に、一人でのんびり旅をすることに憧れまして、ギルドから一人でも大丈夫という信頼を得るために、一人で冒険者稼業を始めました」

「へぇ~、大変でしたよね。一人で依頼をこなすのは」

「敵のヘイトを買うのがボクの仕事だったんで、戦闘面では何とかなったんですが、最初のうちはなかなか依頼を受けることができなくて」

「なるほど、その時どうやって稼いでいたんですか?」

「薬草とかの素材集めですね、あとやっぱり戦争が起きるとしっかり稼げましたね」

「……戦争?」

「はい、兵を集めるために冒険者にも召集がかかるんですよ。それで、敵を人質にとれば金になりますし、最悪敵から鎧とかを奪って売っても稼げますからね。まあ、そういうことをする気は起きなかったですけど」

「え……?でも、死にに行くようなものじゃないですか。戦争って」

「それが意外と死なないんですよ。ボクらみたいな傭兵同士で戦うときは特に。まあ、人に押しつぶされて死んだっていう話は聞いたことはありますが」

「え?でも何百人も人が殺されたとかそういう話はよく聞くのですが」

「それはたぶん国直属の軍隊がやったんじゃないでしょうか?国側としては、自分たちはこんなに強いんだ~って力を示したいでしょうし。持ってる武器の殺意がすごいんですよね、弓とか大砲とか。ひどいときは魔法も飛んできますよ?」

「……」

「あと侵略戦争の時は本当に大変でした。傭兵同士だからって関係なく殺しに来るんですよね。まあ当たり前ですけど。ただ、一番きつかったのが残された人達を見ることでしたね。多分その人たちだけ、戦争が終わらないんですよ。戦争が終わった帰りの時もボクを殺しに来たので、そう思うんですけど」

「……あなた、人を殺して……どう、感じたん……ですか?」

「え、いや殺してない、殺してない!!人殺してない!!」

「え?でもさっきの戦争の話……」

「あーそりゃ、あんな細かく話したらそういう風に思うかもしれないけど!!誓って殺しはやってないよ!?」

「まあそこまで言うのなら……。……ちょっと一旦休憩します?空気を換えるため

 にも」

「そうですね、すみません。空気を悪くさせてしまって」

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