祖母の遺品にあった2枚の写真
黒井夜(くろい よる)
中島悠斗の調査
依頼
この写真の出所を調べてほしいんだ。
いや、久々なのに、いきなり変なことを言ってごめんな。お前が就活終わって卒業まで暇って聞いて、もしかしたら引き受けてくれるんじゃないかって思って。まずは話聞いてくれないか。もちろん、引き受けるかどうかはその後決めてくれていいから。
ああ、好きなもの頼んで良いぞ。昼はもう食ったか? まだなら、ほら、頼め頼め。もちろん俺の奢りだ。食いながら聞いてくれれば良いから。
……よし。順序立てて話すよ。まず、この写真は2枚とも、俺の祖母が持っていたものだ。祖母は2ヶ月前に亡くなった。ちなみに祖父はもっと前に死んでるから、住んでいた空き家になって、それで遺品整理をしていた。ああ、祖母は俺の親父の母親だ。つまり父方の祖母だな。
親父が小さい頃とか、両親の結婚式とか、孫の俺が生まれたときとか、そういうまあ普通の思い出っぽい写真に混ざって、この2枚が出てきたんだ。見ての通り、人間はひとりも写ってない、ただの家と斜面の写真だな。日付が入ってないからいつ撮ったかはわからない。見た目の色褪せ具合からして、何となく古そうなのはわかるけどな。
そういうわけで、俺からすると、いつどこで撮ったのかさっぱりわからなかった。その後伯父さん……親父の兄とか、いとことかにも会ったから聞いてみたけど、誰もわかる人はいなかった。
ぱっと見た感じ、1枚目は何の変哲もない家だよな。一軒家。普通の。俺からすると田舎っぽく見えるけど、何十年も前の開発されきってない住宅街だとこんなもんなのかもしれない。わからないな。
それから2枚目はもっとヒントがなくて、正直ただ裏山か何かを撮りましたって感じに見える。木とか草が生い茂っている斜面にしか見えないよな……。
祖母が亡くなったのはかなり急だったから、正直かなり驚いた。もちろん俺の祖母なんだから、年齢的にしっかり高齢者だし、何があってもおかしくはなかったんだけどさ。とはいえやっぱり、急に死ぬっていうのは驚くものなんだよな。
その……俺、親を早くに亡くしてて、育ててくれたのはばあちゃんだから。それもあって、遺品整理のとき、唯一由来がよくわからなかったこの2枚のことが気になってるんだ。こう……急なことだったけど、それでも区切りをつけようっていうのに、モヤモヤが残るっていうか。何となくわかるだろ?
だからこれがどこなのか調べたいんだけど……忙しくて、時間が取れないんだ。新人だし、今のうちに出来る限り仕事を覚えて早く戦力になって、ランクアップしたいんだよ。
それで、お前に頼みたい。もちろんタダとは言わない。報酬は出す。そうだな……時間も、下手したら労力もかなりかかるかもしれない。だからその代わりに、成功報酬30万円でどうだ?
はは、すげえ顔。言ったろ? 俺にとってはばあちゃんは育ての親みたいなものだから。それでわかるなら、区切りをつけられるなら安いもんなんだよ。それに自分で調べられない負い目もあるしな。安心しろ、アホみたいに忙しい代わりに、給料は良いんだよ。
それに……正直、こんなこと頼めるの、お前くらいなんだ。引き受けて……くれるか?
……そうか! 恩に着るよ。ありがとう。そうだな、とりあえず1週間後、進捗を教えてくれるか? ああ、よろしく。調査方法は任せるよ。
マジでお前はいつも俺の言うことをすぐ聞いてくれるよな。本当に、助かるよ。
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