「封」の章 ⑧狛犬

「青さん、さっきの勾玉を貸してください」

 勾玉を受け取り、手のひらで包み込んで、目を閉じる。


(もう、どうやって、探したらいいのよ)


『そこにおる狛犬の後ろ足の下に、小さな穴があるから、そこに勾玉をはめてくれ』


 目を開けて、狛犬を見る。


(狛犬は右と左にいるけれど、どっちなの?)


『始まりの「あ」の口を開けた方じゃ〜』


 左右の狛犬の口元を見る。口を開けている狛犬と、口を閉じた狛犬がいた。


「青さん、「あ」の口をした狛犬の後ろ足の下に穴があるらしく、勾玉をはめるようです」


 青さんとふたり、狛犬に近づき、しゃがみこむ。


「めのうさん、勾玉の形をした穴がここにあります」

「本当ですね。入れてみましょう!」


 ぽんっという音とともに、白い煙がもくもくとあがった。

 思わず、後ずさりした瞬間だった。


『おなご、礼を言うぞ!』


 石像の狛犬を30㎝ほどのミニサイズにした真っ白なものが肩に飛び乗ってきた。


「きゃぁ」と叫ぶ。

「めのうさん、大丈夫ですか」

「青さん、私の肩に変なものが乗ってきたんです!」

「すみません。何も見えないんですが……」

『わしが見えないとは……おなご、とりあえず、店に帰るように伝えてくれ』

「青さん、とりあえず、お店に帰るようにとのことです」



 私の肩に乗っているものについて、歩きながら、青さんへ説明する。


「めのうさん、肩は重くないですか?」

「実体はないので、重さは感じませんね。逆に肩が軽いような気がします。幽霊が近づいて来ると重たい感じがするのですが、その逆で……」

『おなご、そこらの霊と一緒にするな! わしは、店の守り神じゃ! まったく……怒ったら、腹が減ったぞ』

「青さん、お店の守り神さまだそうです」

「なるほど、お店の守り神さまならば、大切にお迎えしなければですね」

「あの……お腹が空いたそうで、とっても大きなどらやきと緑茶を召し上がりたいそうです」

「大きなどら焼き? もしかして、三笠ですね。すぐに買って来ますので、めのうさんは先にお店へお戻りください」


 肩乗り狛犬?!と一緒に「香り えん」に帰ることになった。

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