「封」の章 ⑤穏やかなお盆
横浜の実家に帰った。
夕飯を食べて、久しぶりに自分の部屋に入る。ベッドにゴロンと寝転ぶ。
(あ~落ち着く……って、まだゆっくりしてはだめよ!)
ベッドから飛び起き、雨戸をきっちり閉める。隙間がないか、もう一度、チェックして、カーテンを閉じた。
次に、ルームライトがちゃんとついていることを確認。
それからミニテレビにもスイッチを入れ、夜中、怖くない番組のチャンネルを探した。
最後に、直径3センチの水晶の玉を枕元に置いた。
(これで準備完了!)
見える私にとって8月は、恐怖のイベント「お盆」が始まる。普段の2倍、霊と遭遇してしまう。だから、夜に向けてしっかり準備をする。窓は外が見えないようにし、部屋も暗くせず、テレビをつけたまま寝ている。
(やっと、のんびりできる~)
ベッドの上でバッグの中身の整理を始めた。ノートや手帳と一緒に霊除け匂い袋も取り出す。ぎゅっと匂い袋を握ってから、水晶玉の隣に置いた。
(今年は、良いものをもらったから、大丈夫かもね)
予想通り、霊除けの匂い袋の効果は、すごかった。
お墓参りで墓地に行っても、母の付き合いで夜にお祭りに行っても、大体、私の半径10メートル以内に霊は近寄って来なかった。
ちなみに、私にとって良い霊には、あの匂い袋の効果がないことにもびっくり。他界した祖父母が遊びに来てくれて、懐かしくて嬉しかった。私が怖がると思って、昼間、リビングに来てくれたからかもしれない。
18年間生きてきて、一番、穏やかなお盆を過ごせて、霊除けの匂い袋は、私の必需品になった。
(アルバイトがんばって、霊除けの匂い袋を手に入れなくちゃ!)
お土産に鳩サブレを買って、8月末、奈良の大学の寮に戻った。
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