魔剣士は副業につき
春風
膿出された歪み
追い出し
街の中心にあるギルドという施設。その中にある談合室で僕はよくわからない因縁を付けられている。
「いいでしょう!」
「いいんだな! ティックス」
部屋の一角に設置された1つのテーブルに付属する中で一番大きな椅子に座るアルフォンドが立ち上がりそうな勢いで決意を聞いてくる。本当に追い出していいんだな、と。
「そう言っているでしょう! しつこいですね」
「お前のためを言っているんだぞ」
淡い青色の上着を羽織り、赤みがかった髪を掻き上げて僕はここから立ち去ろうと考えます。
何故、こうなったか……経緯を話していかないといけないでしょう。
僕は定例会議に遅刻したのです。ですが、事前にその事を伝えていました。度々、していることなので慣れたものです。
「申し訳ありません。遅れました――」
くすんだ黒色の分厚い革靴を鳴らしてギルドの談合室に向かう。リーダーである黒い鎧のアルフォンドから今回の議題を一方的に伝えられました。座れず、僕だけが立っている状態です。
「もう始まっている。ティックスを追い出すか、だ」
頭の中は疑問符が浮かべ、他のメンバーもそれほど騒ぎ立てず、事が進んでいく様子。さも当たり前かのように事が進んでいきました。
「どういう事です? 今週はどの難関依頼を受けるか話し合う予定ではなかったのですか?」
「そうよ。それだけ、貴方の行動が目に余るのよ」
白のケープに緑色のドレスを着た魔術師のミビットが髪先を指に絡ませながら聞いてきます。
「一体、何が問題だというのです?」
こんな話になったのも追い出す、と言われたのも僕としては不服だとしか言いようがありません。理不尽な理由ならば、容赦なく責め立ててやるつもりです。
「今回もそう。貴方は遅刻した」
「私、遅刻することは前回の時に伝えていましたよね?」
そう、こうなるのを見越して僕は先に手を打っています、何度も。それにいつも僕を半分無視して議題を進めているではありませんか。
「だから何だってんだ? 事前に言っていればアンタはなんでも許せるわけ?」
タンクトップと膝下丈のズボンを履く運搬手のルナンは僕に対してそう言います。勘違いしているようですが、断りを入れるため。決して許されるために伝えているのではありません。
「許す許さない以前の話です。私が休みの日をどう過ごすかは勝手でしょう」
「そうじゃないだろ、ティックス。お前はチームに迷惑をかけている」
本当にそうですか、具体的にどのくらい? 僕に分かる説明をお願いしますよ。
「一応、聞いておきますけど。遅刻して被害があるのですか?」
「そうじゃない……そうじゃないんだ、ティックス。遅刻してくる、その事実を話そう」
「何度もよ。これで何回目なの?」
「あまり数えていませんが」
ほぼ毎回、遅刻していますから。一時的に抜けてきていますけど、作業していると時間が早く経ちますからね。
「そんなんだから、アンタは3人から責められんだ。分かってんのか?」
「数えていないのは、仕方ないでしょう。定例会議の回数と同数なんですから」
アルフォンドの口元がふと下がった時、あまり良くないのを僕は知っている。人の居ないような静かな談合室に小さな声がポツリ、とこぼれ落ちた。
「反省の色なしか。それがどれだけチームの士気に関わるか知らないらしいな。チームの内、一人が身勝手な理由で遅刻する。お前は剣士としてチームに貢献していたらいい。定例会議に参加して意見を聞いて述べたらいいんだ。そんな当たり前も出来ねぇでチームなんてやっていけない」
「そうよ、チームなんだから、協調性が大事。勝手に崩して身勝手な理由で怒って馬鹿みたい」
「言われてんぞ! アンタはチームの邪魔をする寄生虫なんだよ!」
そこまで言われる
「遅刻する理由は散々話していましたけど。何が悪いのですか?」
ほぉん……アルフォンドは僕の言葉を聞いてそういう反応をした。人を小馬鹿にするようなそういう反応だ。
「遅刻するってならチームを抜けてもらおうか?」
抜けてもらおう……ですか。ここまで言われて一緒にチームをやれるかと聞かれると答えは否。
僕にもそれなりの覚悟とか誇りに近い信条はありますからね。それを傷つけられるならば、こちらも言うべき事がありますよ。
「いいでしょう!」
「いいんだな! ティックス」
「そう言っているでしょう! しつこいですね」
「お前のためを言っているんだぞ」
そういう話の流れです。荒ぶった気持ちをそのままに、僕は言ってやりました。
「私のためですか……? 具体的に何のために」
「チームを追い出されたら行き先なんてないだろう? ここで非を認めて詫びるなら仕方ないから置いてやるよ」
非を認めたら置いて
もう何を言われようとも僕の気持ちが変わる、なんてありませんとも。そこまで言ったのならば、覚悟はおありなのでしょうね。
「いいです! 必要ありません」
そうして、僕はチームから脱退する事となりました。
「おい、本当にいいのか!」
「ええ、構いませんよ」
僕のチーム以外、誰も居ない談合室を立ち去り、ギルドから外に出るとある場所へと向かいました。
勿論、作業を再開するためです。
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