第5話 迎え撃ち

 朝食のあと、聖女の聖服の白いドレスから茶褐色のシャツとズボンに着替えた私は、戦友が待つ広場の石畳に出る。カツカツと軍靴の音が響いている。


「皆。自分の定位置はわかっている?」

「俺は正面の門の外だ」


 レイが言う。


「俺は王宮の正面玄関だ」


 ジャスティンが答える。


「私は侵入してきた敵を迎え撃ちます」


 クラークが最後に応じる。


「いいわね、大丈夫。こっちは兵士の半分以上は負傷者だから陸軍の戦力は期待できない。その分、レイとジャスティンは思い切り暴れてちょうだい。そしてもしも負傷したなら私がいる救護スペースに来なさい。いいこと? 負傷することは恥じゃない。むしろ名誉の戦傷せんしょうよ」


 救護スペースは石畳の広場の片隅に天幕を張り、敷布が敷かれているだけだ。傷は私が呪文で治すため、包帯や消毒といった治療器具は置かれていない。血を洗い流すための水がバケツに汲まれているだけだ。私はそこで傷口を塞ぐ魔術で兵士等を援護する。


「さあ、みんな。それぞれの定位置で迎え撃って」


 私の言葉でジャスティンとレイが怪鳥になり、飛んでいく。残されたクラークと二人でそれを見送った。


「救護スペースが集中して襲われることもある。銃の用意はいいか?」

「もちろん」


 私は青いレーザービームの銃を脇で構えて見せた。


「レイに裏切られたライダ国の戦力がどれほどなのかがわからない。容易に決着するするのかもしれないし、ライダ国には秘策があるのかもしれない。どっちに転ぶかは始まってみないとわからない」

「そうね。油断はできないわ」

「それが分かっているなら大丈夫か」


 クラークが皮肉交じりの声音で言い、片方の頬をニッと引き上げる。どこまで馬鹿にするのだろう。この男。


 早速閉じられた門外では人の悲鳴が聞こえ出す。私は救護スペースに行く前に本館の最上階に移動した。クラークも後からついて来る。

 四階のバルコニーに出ると、レイが兵士等を踏みつぶし、火炎を吐いて焼き殺す様がまざまざと見える。それは狂気に近い攻撃だった。殺された恋人の仇を精一杯打っているのだろう。

 そう思うと、胸の奥がチクリと痛んだ。

 レイの怒りが激しければ激しいほど、彼女を愛していたことになる。


 レイが敵兵の半分以上をあっという間に倒した頃、私は救護スペースに移る。まだ誰も来ていない。この調子でいけば門を破られることもないかもしれない。私はジャスティンの所まで行く。


「レイの援護に向かって」

「わかった」


 大鷲おおわしになった彼が飛んでいく。


 私が負傷した兵士の治療に門外に向かうかどうか、迷っていた時だ。

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