第24話 錬金術とは
「錬金術とは……」
ブレンデリアは静かに語り始めた。
「その昔、石を黄金に変えると言われておった。
そんな無から有ができることは無論できん。
が、それに近いことはできた。
何かわかるか?」
ブレンデリアの問いかけにムショクは首を振った。
「金属の純度を上げる。精錬じゃ。
もともとは、鍛冶屋がその冶金の分野をおさえておったが、より専門性の高い錬金術師がそこをおさえるようになった。
まぁ、錬金術の思想ともあっておったからのう」
錬金術の思想。
真実への探求。
ムショクがこの職業を受け入れられた理由の一つでもある。
「たった一つの完全な存在。
すべての邪魔なものをそぎ落とし到達する完全なもの。
わしらが賢者の石に向かうその道に冶金はあった」
「どうして、その話をしたんだ?」
「鈍いやつめ。この石もそうやって精錬されたものの一つじゃ。
<ネツァク>か……。貴様、とんでもないものを手にしたな」
「ネツァク?」
「翠玉……<オウネアの翠玉>がベースであろう。
見たこともない銅が含まれているようだが……しかし、どうやってこれを作ったんじゃ?」
ブレンデリアがじっと<森林石>を見ながら、聞き取れないほどの小さな声でつぶやき続けている。
「ふむ……」
しばらく見続けていたブレンデリアは満足そうな顔で石から目を離した。
「何か分かったのか?」
「逆じゃ。全くわからん」
分からないと言っている割にはまるで、新しいおもちゃを得た子供の様に顔が笑っていた。
未知のもの、崩し甲斐がありそうな大きな壁にあたる時に思わず出る笑み。
彼女の気持ちは分からなくもない。
ふと、ゲームに浸りながらも現実の世界のことが頭をよぎった。
未練なのだろうか。
切り捨てられた俺が今更戻れるわけでもないだろうに。
「しかし、お前は役に立たんな。
知らんことばかりじゃないか」
「貴様、言いよるな」
ブレンデリアが不満そうにそれでいて、少し満ち足りた笑いをする。
彼女は未知が、自分が知らない世界があることに喜んでいた。
「気に入ったぞ。
名は何という?」
「ムショクだ」
「覚えておこう。
貴様とは、<フェアリーテイルクライシス>の謎を明かせそうだ」
「フェアリーテイルクライシス?」
「その時が来たら説明しよう。
それとも、後ろにいるなんでも知っている彼女に聞くかい?」
少し嫌味に笑うブレンデリア。
ナヴィは彼女にあってからずっと静かにムショクの陰に隠れている。
「さて、そろそろ、外の雨も止むじゃろう」
窓の外を見たブレンデリアがそう言うが、どう見ても、外は夜の風景だった。
いや、そもそも、ここに入ってきたのはまだ昼間だ。こんな早く夜になるのはあり得ないことである。
「この館の中は外と時間も空間も違う。
わしが作業しやすくずっと夜なんじゃ」
ブレンデリアは館から出れば雨上がりだろうと言葉を続けた。
「よい、気分転換になったぞ。
と言うわけだ、アマテ連れてけ!」
「はい、マスター!」
ブレンデリアの声と共に、後ろでずっと待っていたメイド風の自動人形が先ほどからは想像ができないほど機敏に、ムショクたちを捕まえると、一瞬の内に館の外に連れ出した。
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