第27話 呼び戻してみても

「あんなところにも書庫があったのね、気づかなかったわ」

 家政婦達から書庫のある場所を聞き出し、ご機嫌なシャーロットが独り言を呟きながら部屋に戻るため廊下を一人歩く

「牢屋の側にあるなら黙って連れていけるかもしれないわね」

 シャロとリリーを思い出しフフッと笑い部屋の前に着いたシャーロットが部屋の扉を開けようとドアノブに手を掛けようとした時、少し開いたままだった扉の隙間から二人の話し声が聞こえてきて、二人に気づかれないように、ふと耳を傾けた




「じゃあ魔力は一緒だったの?」

「そうだね。でもここと魔術はなんだか違うかも」

「複数の魔術が使えるのか。ここの結界を作れるなら納得かな 」

「そうだね。でも大分弱くなっているから、魔術はシャロほどじゃないね」

「じゃあリリー……」

「ちょっと」

 シャロの話を遮りシャーロットが部屋の中に入る。驚いたリリーが食べていたおやつを溢してシャロの肩に飛び乗った

「あなた達、ここの結界とか、ここの魔術とか話しているけれど、お母様に会ったの?お父様は?」

 シャロに近づき声を少し荒らげて聞くシャーロット。シャロはふぅ。と一つため息をついて少し残った紅茶を飲む

「いや、会っていない。わざわざ残している魔力を追いかけただけ」

「わざわざ?」

 と、シャロの返事にシャーロットが不可思議に聞き返すと肩に乗っていたリリーが窓の方を向くと窓際に移動した

「リリー、お願いね」

「了解、頑張るね」

 シャロに返事をすると、羽を広げ飛び立っていったリリー。すぐに遠く離れていくリリーを止めようとシャーロットが窓から手を伸ばす

「ちょっと待って、私も」

 シャーロットの声はリリーに届かず、姿は見えなくなった

「ねえ、呼び戻してよ!」

 部屋にいるシャロに声をかけながら振り向くと、シャーロットの横を一瞬風が通り過ぎ、シャーロットの紙がヒラヒラと揺れるその隙間から窓辺に足をかけ出ていこうとするシャロの姿が見えた

「じゃあね、お姫様。後でリリーのおやつを用意してあげてね」

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