第3話 苛立ちを言葉に変えて

「どうやって出たのよ。さっき捉えていた牢屋には傷一つないじゃない」

 再び捕まり牢屋に戻されたシャロに問いかけるシャーロット。言葉強めに問いかけてもシャロはもらったパンをリリーと分けあって食べている

「ちょっと、聞いているの?」

 返事をしないシャロに苛立ったシャーロットが柵を掴んでまた問いかけると、ガシャガシャと柵の音が牢屋に響いてシャロが迷惑そうにこちらを見た

「教えるの、面倒くさい」

 そう言うとリリーにパンを少しちぎってあげて一緒に食べる。シャーロットの気持ちと反対にのんびりしている様子のシャロを見てまたなにか言おうと柵をつかんだ時、警備の者がシャーロットに近づいてきた

「シャーロット様、どうやら魔術を使ったと思われます」

「魔術?」

「はい。この牢屋は結界を張っていないただの牢屋ですので、魔術師なら脱出は可能かと」

「魔術師……」

 報告を受け、シャロがいる牢屋の方に目線を向けると、さっきまでパンを食べていたはずのシャロとリリーの姿がなくなっていた

「えっ、さっきまで……」

 シャーロットがいる廊下を見渡し、今度はシャロが入っていた牢屋の中に入り探してみても姿は見当たらず、牢屋の外でシャーロットを見ていた警備の者達をキッと睨んだ

「すぐ魔術師達を呼んで探して!」

「はいっ、すぐに」

 シャーロットの声と返事を皮切りに辺りがバタバタと騒がしくなる。一人残ったシャーロットが、はぁ。と一つため息をついて少し顔を下に向けると、牢屋の中にある柵のついた小窓から差し込む光に影が見えて窓に目線を向けると小窓にリリーが止まっていた

「シャロ」

「私はシャーロットよ、間違えないで」

 リリーの言葉に大声で叫ぶシャーロット。それに驚いたリリーがバサバサと翼を広げ小窓から外へ飛び出した

「ムカつく!」

 誰もいない小窓に向かってまた叫ぶ。眉間にシワを寄せ苛立っていると、様子を見にきた家政婦や応援に駆けつけた魔術師達が見ていた

「早く見つけなさいよ、私と同じ顔ならすぐ分かるでしょ?」

「は、はいっ!」

 返事と共に辺りがまたバタバタと騒がしくなる。また一人残ったシャーロットは、外に出てふぅ。と一度深呼吸をすると、空を見上げてまた険しい表情

で一人呟いた

「なにが魔術師よ。逃がさないんだから」

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