第51話 ざまぁ……なのか?
池田は伊吹を見て言葉を失った。
さっきまで笑っていた美月の表情が曇り、伊吹に対して敵対心を露わにした。
「後から出てきて”どうしちゃったのかしら?”って、馬鹿にしないでくれます?」
「いえ、そんなつもりは……ごめんなさい」
伊吹は美月に対して頭を下げる。
これじゃあ、美月が言い掛かりをつけて伊吹を虐めているようなシチュエーションになった。
「虐めるのはやめろよ美月。かみらさんが困ってるだろ?」
助け船を出したのは池田だった。
理由は分かっている、伊吹の容姿に惚れたからだ。
本当に現金な野郎だ。学園での態度と180度違う。
「あの、もしかしてアイドルグループの池田優さんですか? うわー、会えて光栄です❤️」
伊吹はトコトコッと池田の元は歩みをより握手を求めた。
「俺の事知ってくれてるんだ? バルコニーから綺麗な花火が見えるんだけど、行ってみる?」
上機嫌の池田は伊吹をバルコニーへ誘った。
伊吹がチラッと俺の方を見たので、俺は小さく頷く。
「行ってみたいです!」
それを聞くや否や、池田はちゃっかり伊吹の腰に手を回して二人でバルコニーへ向かった。
「不破くん、付いて行かなくて大丈夫?」
美月が俺の方を見た。
「俺は大丈夫だけど、美月は大丈夫?」
「私? アハハハ! 全然! だって付き合ってる訳じゃないし! それより、彼女を守った方がいいよ? 優君は相手に彼氏が居ようがお構いなく口説く人間だから」
「そうなんだ」
気にする素振りを見せる事なく、俺はソファに座って飲み物を飲んだ。
恋愛は自由だ。伊吹が池田に落とされたならそれはそれでしょうがない。彼女が誰と付き合うかは彼女自身が決める事だ。
すると、美月が隣にピッタリとくっついて座ってきた。
「ねぇ、私達もどっか行かない? 不破君、ううん、後無君に凄く興味出てきた」
「どういう所が?」
「そうねー、私に一切興味が無い所。それに、あなたの顔!」
「プッ!」
どストレートな回答に思わず吹き出す。
「いいよ、反対側のバルコニーへ行こうか?
あそこなら、死角になって誰の目も気にしなくていいから」
別に下心で美月を連れ出した訳じゃない。俺の行動原理は変わらない。俺にとって利益が有るか無いかだ。
俺は美月が”使える女”だと判断した。
池田の弱みが無いか、彼女と仲良くなればメリットがあるからだ。
ヒュ〜〜〜 バーン!
バルコニーから見える花火は申し分なかった。普通の男なら、モデルの美月と一緒に花火が見れるなんて最高なんだろうな。
「わー、見てあの花火! 綺麗!」
美月は冷めた娘かと思ったが、花火を見てはしゃいでいた。俺は横目で美月がはしゃいでいる様子を見ながらスマホをポチポチとイジっていた。
長良美月……15歳? 高校一年生? 少し前まで中学生かよ。少なくとも俺とタメか、一個上だと思っていてのに……随分と大人びているな。
「ねぇ、花火見てる? あー! 私の事、検索してる!」
俺が美月の事を検索している事がバレてスマホをとりあげられる。
「美月は15歳の高校一年生?」
「そうだよ? 大人っぽいでしょ?」
摩美の一個上かよ。そう思うと、余計に大人っぽく感じた。
「やっぱりー、付き合うなら背が高くて、カッコよくて、一個上位の人がいいなー……後無君、ううん、後無さんは全て満たしてるんだけどな❤️」
美月が寄り添ってきた。
「あっ! あの花火凄い!」
俺は軽くスルーして花火を見る。
『あれ? 美月と不破が居ない! 何処行ったんだ?』
リビングから池田の声が聞こえてきた。つまり、伊吹を口説き落とす事が出来なかったんだろう。
「行こうか?」
「えっ、もう戻ってきたの? 待って! LINE交換しよ!」
美月はそう言うと、俺から取り上げていたスマホを使って勝手に友達登録をしていた。
俺と美月はリビングへ戻ると伊吹と池田が距離を空けて立っていた。
「何処に行ってたの? 長居したら池田君と美月さんに悪いから帰ろう?」
そう言いながら、伊吹は俺の所へ来て俺の腕に手をまわしてきた。
「そっか……そうだな。池田、また気が済んだろ? 俺達はもう帰るから約束は守ってくれるよな?」
「分かってるよ! もう帰っていいから! 美月、バルコニーから見える花火は最高だよ。行こう!」
池田は美月の手を引っ張ってバルコニーへ出て行った。
美月は池田と伊吹にバレないように俺にだけ小さく手を振ってきた。
こうして、池田とのダブルデートは一件落着したのである……
が、俺達はホテルを出てから駅へ向かうが人の波で駅へ一向に辿り着けない。
このままでは終電に間に合わない。
忘れていた。
この花火大会は通称、カップル成立花火大会。電車に乗れなかったカップルは仕方なくラブホテルに泊まって……結ばれる。
「伊吹、電車は諦めてタクシーで帰ろう」
「タクシーって、タクシー代馬鹿になわないわよ? 私達高校生が払える金額じゃないでしょ?」
魔法のカードを持っている俺にとっては全く問題無い。だけど、高校生らしく振る舞わないと怪しまれるか……
「分かった……歩いて帰るか。家まで送るよ」
「いいよ、一人でかえ……キャッ!」
伊吹がそう言いかけた時、すれ違ったカップルの女が持っていた棒状の飴が伊吹の髪に絡みついた。
「あっ、ごめんなさーい、ハハハ」
そう言いながら、カップルは人混みの流れに消えて行った。
こっちもあまりの人混みでカップルを追きかける事も出来なかった。
「ったく、ふざけやがって! 取り敢えずこの人混みから離れよう!」
俺は伊吹の手を引っ張って人混みから離れることに成功したが、伊吹に絡みついた棒状の飴は簡単に取れるものではなかった。
「駄目だ、このままじゃ帰れないな」
「私は大丈夫だから」
流石にこのまま帰すわけにもいかず、周りを見渡すと一件のラブホテルがある事に気付いた。
仕方ない……
「え? ちょ、ちょっと!」
俺は伊吹の手を引っ張ってラブホテルへ入った。
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