大学2年生『芽吹く』

彼、功太に初めて出会ったのは大学近くの飲食店のバイトだった。

私は色々な用事が重なってしまってバイトを休んでいた。

友達に交代してもらっていたのでいつもバイトがない日にバイトがあった。

その日は私も功太もキッチンではなくホールで、忙しくなかったが顔すら知らない仲だったので軽い会釈や連絡事項くらいしかしなかった。

仲を深めるキッカケになったのは次の日のキャンパス内でたまたま出会ったことだ。

「あ、あの、昨日はありがとうございました」

恥ずかしそうに声をかけてきたことを今でも鮮明に憶えている。

なぜ声をかけてきたのは、なぜもじもじ恥ずかしそうにしているのか、聞きたいことは多かったがそんな間柄じゃないので「どうも」としか返さなかった。

彼は「最近バイトを始めたばかりで何もわかっていない自分のミスをカバーしてもらったからお礼がしたい」と私を誘ってきた。

そんな性格じゃないのに。一目惚れしたから勇気を出してその時は誘ったらしい。

わざわざお礼をもらうほどのことはしていないと言ったが、彼は強引に誘ってくれた。

その男らしさが、好きだった。今も、好きだ。

向かったのはカフェで、自己紹介をした。

「僕、斎藤功太。経済学部の二年です」

「私は森本美月。文学部の二年生です」

同い年⁉と驚く功太に当時はちょっと怒りを覚えたけど、今はかわいく思える。

彼は大人びた女性だったから年上だと思ってた、と言っていた。

「趣味とかは?」

「合コン?」

「いやいや!同じバイト先だから仲良くしたいなーって思って!」

私はイケそうな女だと見られているのかな、なんて思っていたっけ。

でも彼はこの時めちゃくちゃ本気だったみたいで、私の言葉を聞いて下心のある人と思われたくないから動揺したらしい。

可愛いな、なんてこの時は思わなかったけど今思うと彼の一挙手一投足すべてがかわいく、愛おしい。

それから数日の間、バイトの回数を増やして私と同じ日に入れるようにしたらしい。全然気づかなかった。

「若干キモいね」と私が言うと「あの時はどうにかして近づいて仲を深めないとって焦ってたの!」と可愛い反応を示してくれた。

バイトでの接触が増えて、少し仲が深まってきたら学校でも話すようになった。

最初のうちは私から声をかけるというより彼から声をかけることの方が多かったけど、だんだん私からも声をかけることが増えた。

一緒にご飯を食べたり、バイトに向かったりした。

そして進級し、大学三年生になった。

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