第28話 立ち上がれ、レクスの民
「報告! 西門に大量の魔物が押し寄せております! 《暁の翼》副ギルドマスター、セリア殿を中心に防衛線を展開中!」
空気が凍りついた。
誰も言葉を発せないなか、隣にいた父ーーオルグが椅子を軋ませて立ち上がる。
「陛下、諸君!西門はセリアに任せておけば良いなどと悠長に構えている場合ではない!
あの女は確かに強い。だがこの《異常》をたったひとつのギルドで支えきれるはずがない!」
その声音には、虚勢でも豪胆さでもない。
ただ《妻を失いたくない》男の焦りが、剥き出しになっていた。
「俺は――Sランク冒険者オルグだ!
頼む、今すぐ共に来てくれ!」
場がざわめく。
滅多に振りかざさぬ称号を、父はあえて突きつけた。
「……オルグがここまで取り乱すか」
王は低く呟き、私へと視線を移す。
その目は戦場を見据える鋭さを宿しながらもーー私の震えを見抜いたのか、一瞬だけ柔らかく緩んだ。
「英雄オルグが声を張り上げてまで訴えるなら、疑う余地はない。ならば我が前線に立とう」
会議場がどよめく。
王は一歩進み出て、諸侯も商人も騎士も冒険者も一望する。
「すべては我が名のもとに補償する!恐れるな、レクスの民よ!
命も財も、余が責任をもって護り抜く!
商路を閉ざさず、防衛も果たす!
迅速に処理し、安全も販路もすべて勝ち取るのだ!」
「立ち上がれ!レクス王国の民よ!」
その豪放なゲキに、渦巻いていた迷いや対立が一気に戦意へと変わっていく。
武を持つ者は剣を掲げ、商を持つ者は数字で流通を操る。
戦場は剣戟の場だけではない――この国のすべてが、今立ち上がろうとしていた。
気づけば私の震えは止まっていた。
胸を締めつけていた不安は、熱に押し流されるように消えていく。
「……母さん」
心の中で呟き、私は父の背を追って駆け出した。
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