いきなり無職

@sikuhakku717

第1話  元社長、いきなり無職になる

第1話 元社長、いきなり無職になる(コミカル版)


「――明日から来なくていい」

はい出た。ドラマの悪役が社長を追い出す時に言うやつ。

でもこれは撮影じゃなくて、リアル会議室。カメラも監督もいない。いるのは、やたら真剣な顔の現社長だけ。


理由は「業績不振」と「私生活の乱れ」。

業績? 黒字。

私生活? …まぁ多少は乱れてた。夜にラーメンを2杯食べるとか。

それ、解任案件なのか?


こうして肩書きは「経営者」から「無職」に。

手元に残ったのは、借金3,700万円と、なぜかちょっとした開放感(おそらく現実逃避)。


その夜、現状を書き出してみた。

資産はある。現金もある。

ただし同じくらい、いやそれ以上の支払い予定が並んでいる。

「この金は自由じゃない。鎖付きの金だ」

ページをめくるたび、心の中でガチャリと鎖の音が響く。


でも――この鎖、意外と悪くない。

不自由さと一緒に「自分がやってきた証」もついてくるからだ。

それを外してしまったら、本当に何も残らない気がする。


そして、翌朝。

目覚まし時計のベルと共に、無職2日目が始まった。

やることは……特にない。

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