魔王城線と三人の日常③ 魔王城駅のゼラ

 シュゥゥゥゥゥゥゥゥゥーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー……ガッタ!

「ふう………………」

 魔王城駅のホームにやって来たゼラ。

 通りすがりの戦乙女に会えてホッとしたのだろう。

 リルレは、魔王城線に乗ってアロスとスキを探しに行った。

 しかし、今のゼラには予定が無い。

 予定を埋めるとしたらアルラウネの観察日記。

 だが、その一日分の宿題がもう終わっていた。

「誰か来てくれないかなぁ!」

 すると、向こうからもう一台の魔王城線がやって来た。

 ガターーガターーーーガターーガターーーーガターーガターーーーガターーーー…………

 シュゥゥゥゥゥゥゥゥゥーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー……ガッタン!

「ううん!」

 ガッタ!

「おお!」

「久しぶり、メラ!」

 魔王城線が駅に着いたと同時にドアが開いた。

 そこから現れたのは、蠅と羊と黒い犬が合体したモンスター娘。

 そう、ゼラの親戚のメラだ。

「ここで会えるなんて偶然ですね」

「まさか、僕の暇つぶしに付き合ってくれる人がいたなんてね」

「けれど、わたしはベルゼブブ様と会議があるんだ。忙しくなる」

「そうだ…………暇は潰せないね」

「けれど、会議が終わったら楽しいことが起こるよ」

「それって、どんな…………」

 シュッ!

「ここからは秘密だよ。忙しいからごめんね!」

 タッタッタッタッタッタッタッタッタッタッタッタッタッタッタッタッタッタッタッ……

 メラに口を押さえられたゼラ。

 メラが駅の出口をへ向かっているところをゼラはじっと見ていた。

 『会議が終わったあとの楽しいこと』とは何なのか?

 気になったゼラは空を飛んで先回りをした。

 パタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタ!


 魔王城の会議室。

 ここでは、メラとベルゼブブと橋姫と雨の女神が集まっていた。

 メラの右にいるのはベルゼブブ。

 赤黒い肩出しドレスと白いネクタイと銀の王冠、黒いロングヘアーとハエの羽をした褐色爆乳のモンスター娘。

 それの向かいにいる橋姫。、釘が三本刺さった白いポニーテールと白い二本角、白と銀色の二枚重ねの和服と水色のミニスカートをしたモンスター娘。

 その橋姫の右にいるのは、雨の女神。

 黒いツインテールと黄色い目、半透明のレインコートと白いブラウスとチェックのミニスカートをした魔法少女だ。

 四人は、三等分に線が引かれた紙を見ながら話し合った。

「今日はない八月二十日に行う、トレインガールベルゼブブ三つ巴駅弁大会のルールに着いて話し合おうと思う」

「はい!」

「別にあたしは、必要なかったんじゃないの?」

「あたし達が暇なだけでしょう?」

「実は、審査員が足りないんだ。二人だと0票が確実に出る」

「けれど、何に増やしても、0票が出る可能性はあるわよ。一つ意見に偏ればね」

「橋姫様が言ったとおり、何人増やしても無駄かぁ……」

「けれど、ベルゼブブ女王。あたしにいい考えがあるわよ」

「どんな考えだ?」

「一人10点満点で評価して、それの合計するの。そうすれば公平になるわ」

「ボルダルールってやつですね」

「これは、公平で素晴らしいな」

「けれど、盗み聞きされちゃっているみたいよ」

「ええ?」

「あたしの娘。例の魔法少女を連れて来て」

「ううん?」

「ううん??」

 ガタッ!

「おい! 前に進め! 前に進め!」

「うう…………」

 橋姫が無理矢理会議を中断させた。

 開いたドアからは、橋姫の娘にハンマーで脅されるゼラの姿。

 ゼラは、殺されないように両手を上げながらベルゼブブの隣に座った。

 ストッ!

「会議が気になったから聞いてたよ」

「無理矢理終わった感じだが、会議はすでに終わっている」

 グウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥーーーーーーーーーーーーーーーーーー…………………………

「お腹空いているようだな」

 ゼラの腹の音に気づいたベルゼブブは、直ぐに自分のお腹を触った。

「お腹が空いているのは僕だよ!」

「まぁ、娘よ。今からあたしの魔法を見せてやる」

 ポンポン! ブオン!

 ベルゼブブが腹を叩くと、彼女の目の前に丸く平たい光が映しだされた。

 すると、パッと光が弱まり、そこからハエ娘のメイドが映し出される。

「メイド長、例のものを用意してくれ!」

「はは!」

 ブユン!

「何をしたの?」

「これから、料理を作るかしら?」

「料理を作る依頼はしていない。これから、出て来るのは魔境きさらず線の料理だ」

「魔境きさらず線の料理?」

「モンスター娘が入れないダンジョン路線ね」

「わたしも橋姫様も雨の女神様食べたことがないです」

「みんな、楽しみにしているようだな。けれど、そろそろ来る頃だろう」 

 コンコンコン!

「入ってくれ!」

 カタ!

 カラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラ……

 ゼラも橋姫もメラも雨の女神も、全員が魔境きさらず線の料理に注目。

 その気になる四種類の料理が、ハエ娘によってテーブルに置かれた。

 一つは四枚のレモンポークステーキ。

 二つ目は、四等分のマヨコーンピザ。

 三つ目は、レタス天のお寿司五種。

 四つ目は、四杯のフーツルカレースープだ。

「ううん…………」

 ゼラはよく知っているメニューばかり。

 どこか、アレンジが加わっているようにも思える。

「では、いただきます!」

「いただきます!!!!」

 ベルゼブブの合図ともにお昼のを食べた。

 最初は、フルーツカレースープ。

「スウゥゥゥゥゥゥゥゥーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー……」

「コクコクコクコクコクコクコクコクコクコクコクコクコクコクコクコクコクコク……」

「コクコクコクコクコクコクコクコクコクコクコクコクコクコクコクコクコクコク……」

「コクコクコクコクコクコクコクコクコクコクコクコクコクコクコクコクコクコク……」

「コクコクコクコクコクコクコクコクコクコクコクコクコクコクコクコクコクコク……」

 ゼラ達は、優しい音を立てながらカレースープのすする。

 ココン!

「おお!」

「りんごにバナナにレーズン」

「スパイシーな味をまろやかにしている」

「娘にも食べさせたいわ」

「けれど、僕には甘過ぎるなぁ」

「バトルで使ったカレーパンには、レーズンは無かったんだろう」

「うん!」

 次は、レモンポークステーキ。

「はぐう!」

「くむくむくむくむくむくむくむくむくむくむくむくむくむくむくむくむくむくむ……」

「くむくむくむくむくむくむくむくむくむくむくむくむくむくむくむくむくむくむ……」

「くむくむくむくむくむくむくむくむくむくむくむくむくむくむくむくむくむくむ……」

「くむくむくむくむくむくむくむくむくむくむくむくむくむくむくむくむくむくむ……」

「コクン…………………………んん!」

「んん?」

「痺れと酸っぱさたまんないね!」

「ちょっと、大人向けかしら? 娘向けではないわ」

「けれど、新しい弁当の参考になりはすね」

「けれど、僕のレモンポークはもっとシンプルだったよ」

「ひょっとして、山椒ガタッ無かった?」

「うん!」

 次に、マヨコーンピザ。

「むぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐ……」

「むぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐ……」

「むぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐ……」

「むぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐ……」

「むぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐ……」

「コクン…………………………んん!」

「マヨネーズのコクとコーン甘味がいいね!」

「娘向けね!」

「それだけでなく、カリふわなみみがとてもいい!」

「けれど、僕のマヨコーンピザの方がもっとコクがあった」

「チーズ入れたでしょう?」

「うん!」

 最後にレタス天の五種盛。

 それぞれ好きな味を選んで食べた。

「パリパリパリパリパリパリパリパリパリパリパリパリパリパリパリパリパリパリ……」

「パリパリパリパリパリパリパリパリパリパリパリパリパリパリパリパリパリパリ……」

「パリパリパリパリパリパリパリパリパリパリパリパリパリパリパリパリパリパリ……」

「パリパリパリパリパリパリパリパリパリパリパリパリパリパリパリパリパリパリ……」

「パリパリパリパリパリパリパリパリパリパリパリパリパリパリパリパリパリパリ……」

「コクン!」

「コクン………………………………んん!」

「山椒レタス天は最高ね! 中華風のお寿司って感じ! 軽やかな食感の奥から痺れグンッと来るわね!」

「甘だれレタス天は、娘にオススメね。今度食べに行きたいわ」

「ブラックペッパーレタス天も最高だな。レタス天そのもの味を楽しめますね」

「抹茶塩レタス天は、とてもいい! 苦美味い感じ食欲をそそる!」

「僕は、ペペロンチーノレタス天だね。こんなイタリアンなお寿司は初めだよ!」

 カラン!

「ごちそうさま!!!!!」

 楽しいお昼が終わり、ゼラ達は満足。

 その後、五人は会議室出て客間でくつろいだ。



 




 

 




 

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