魔王城線

魔王城線と三人の日常

魔王城線と三人の日常① 魔境新都心駅のアスロ

「ヒヨヒヨヒヨヒヨヒヨヒヨ!」

 ピピッピピッピピッピピッピピッピピッピピッピピッ!

「うう~~~~~~~~~~ん……………」 

 ピピッピピッピピッピピッピピッピピッピピッピピッピピッピピッピピッピピッ!

「うう~~~~~ん…………ううん………………」

 ピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピ!

 カチャッ!

「はぁ…………………………」

 八月十五日の朝。

 まだ眠たい様子の中目覚まし時計を叩いたアスロ。

 全裸の彼女は、ゆっくりとベッドから起き上がった。

 ガタッ!

「風が気持ちいいわねぇ!」

 窓を開けたアスロ。

 朝の涼しい風が彼女の裸体を気持ちよく撫でている。

 ガタッ!

「そろそろ朝ごはんにしましょう」

 タッタッタッタッタッタッタッタッタッタッタッタッタッタッタッ…………


 ティン!

 全裸でリビングにやって来たアスロ。

 トースターで焼きいた食パンを平たいお皿に盛り付けている。

 カバンッ!

「あったあった!」

 冷蔵庫からアスロは、作り置きの豆乳ポタージュ見つける。

 カオン!

 彼女は、そのスープを冷たいまま器に盛り付けた。

 そして、海藻サラダとハートの焼き目がついたトーストの近くに豆乳ポタージュを置く。

 ゴゴン!

「いただきます!」

 最初に豆乳ポタージュ。

「ススーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー…………………………ううん! やはり、魔豪国の鯖缶は便利ね。豆乳と混ぜるだけでスープが作れちゃう」

 続いて、海藻サラダ。

「ジャキジャキジャキジャキジャキジャキジャキジャキジャキジャキジャキジャキジャキ……バリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリ……ゴクン…………………………んん! 魔豪コンビニで買った海藻サラダも悪くないわね。わかめとトサカノリの食感がクセになるわ」

 最後は、ハートの焼き目がついたトースト。

「バリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリ……バリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリ……バリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリ……ゴクン…………………………んん! 何も付けてないのに甘い! 小麦本来の味がしっかりするわね! バリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリ……」

 と、一枚のトーストを食べきったその時。

 カチッカチッカチッカチッカチッカチッカチッ……

「ううん?」

 アスロは掛け時計を見た。

「7時12分? あああ!」

 カバ!

 アスロは、慌てて谷間に挟んでいたスケジュール帳を見た。

 何と、旅の予定が組まれていたのである。

「スクールチェンジ!」

 パサン!

「ハグッ!」

 タッタッタッタッタッタッタッタッタッタッタッタッタッタッタッタッタッタッタッ……

 ガタッ!

 アスロは、慌てて家を飛び出した。


 パサン…………パサササン…………

 右へ右へ左へ。

 左へ右へ右へ。

 右へ左へ左へ。

 左へ左へ右へ。

 アスロは、ハートの焼き目がついたトーストを咥えながら複雑な道を高速で飛んでいく。

 しかし、彼女は誰とも打つかっていない。

 美少女がパンを加えて角で打つかると言う話があるが、それは魔法界でも珍しいことである。

 そう話している内に、アスロは魔境新都心駅に近づいている。

 魔境新都心駅は、もともと魔王城線と魔境きさらず線の二つ路線が走っていた。

 しかし、ある路線が停車駅を増やしたことで三本になったらしい。

 その、路線と言うのは………………と言うのはいずれわかる。

 ドタン!

「いでででででででででででででででででででででででででででででででででででで……」

「大丈夫ですか?」

 奇跡的にも、アスロは誰かに打つかった。

 それは、水色のロングヘアーと白い大きな翼と白い鎧と白いワンピースをした爆乳の天使だ。

 しかし、アスロが彼女にあったのは二度目だった。

「ええ? ひょっとして、あたしを列車事故から助けた戦乙女ヴァルキュリーさん?」

「覚えていたんですね」

「名前は聞いてないけれど」

「あたしは、ルルン・リルレです。久々に会えて光栄ですね」

「ところで、リルレさんは何しに来たの?」

「魔王城の観光です。今は、それを終えたところですよ。ご一緒に、魔王城線を一周しませんか? 交通費はあたしが支払います」

「ありがとう!」


 スーーーー……ガターーガターーーーーー……ガターーガターーーーーー…………

「ガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤ……」

 魔王城線に乗ったアスロとリルレ。

 二騒がしい車内の中。二人は自販機で買ったドライソーセージを食べていた。

「むぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐ……」

「むぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐ……」

「ゴクン…………………………んん!」

「激辛だけれど、あとから旨味が来ますね」

「あたしは、学校帰りによく食べているから馴染みのある味よ」

 チュッチヤッ!

「それにしても、今日が最後旅とはね…………すっかり忘れてた」

「それは、ゼラさんのドジです」

「ええ?」

「ゼラさんから聞きました。ゼラさんはどこに行くかわからない旅の計画を立てていました。しかし、それは間違った計画だったそうです」

「ああ、ゼラったら待ち合わせとかしてないんだ。よかったぁ……」

 その後、魔王城線は魔王城駅に近づいく。



 



 


 

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