魔境きさらず線最南端② 比南浜村の豆乳塩麺
スキがハラロと戦っていた頃。
魔境南村に向かっていたゼラとアスロは、木々に囲まれた道を歩いていた。
ツァッツァッ…………ツァッツァッ…………………
「向こうに、白い灯台があるね」
「もう直ぐね!」
やっと故郷に替えると思ったアスロ。
しかし、その時間を足止めするものがやって来る。
ツァッツァッツァッツァッツァッツァッツァッツァッツァッツァッツァッツァッツァッ!
「ううん?」
何と、向こうから青い紐水着と黒いロングヘアーをした爆乳のサキュバスが走って来たのだ。
「お父さん!」
「え? お父さん? 女の子だけれど?」
「サキュバスは自分に魔法をかけると、同性でも子どもが作れるの」
「忘れてたね。狂信茶屋の旅の時に言ってたね。忘れてた」
「ちゃんとしなさいよ」
「ごめんごめん」
「けれど、お父さんはこれからどこ行くの?」
「これから、比南崎村に行くんだ。二十年前に出来た村だよ」
「比南崎村? どう言うところ?」
「行ってみればわかるよ」
ゼラとアスロとアスロのお父さんが比南崎村に向かった。
ツァッツァッツァッツァッツァッツァッツァッツァッツァッツァッツァッツァッ……
たくさんあった木々は、少しずつなっている。
ザザーーーーーーーーーーーーーーン!
ザバーーーーーーーーーーーーーーーーーーン!
ザバーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン!
ドッバーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン!
それだけでない。
砂浜が広く、波がたくさん押し寄せている。
「なんだか、涼しいね。夏とは思えないよ」
「サキュバス族は、露出の高い服を好む。そんな、状態でも過ごせるように海の近くの村を創ったんだ」
「これが、魔境南村の歴史なんだね」
カチャカチャ! カチャン!
「ううん?」
魔境南村の歴史を聞いたゼラ。
岩の裏から、三人の褐色全裸の女の子が槍を持って現れた。
よく見ると、ゼラやアスロよりも若く見える。
モンスター娘で言うなら十八歳くらい。
成熟したばっかりの年齢に見える。
しかも、動物耳や角や羽や尻尾といった特徴はどこにも無い。
それに、目は二つ、口は一つ、肘は二つ。異形なモンスター娘とは違う姿だ。
「ひょっとして、人間?」
「そうだ! 蠅の化け物!」
「わたし達は、人間の生き残りの祖先だ」
「わたしの子どもを作りに来たんだろう? わたし達の初めてを奪え!」
「まさか、処女?」
「悪かったな」
「けれど、初めてを奪う気は無いわ」
「なんだと?」
「サキュバスは、成熟したばかりの人間は襲わない」
「五年過ぎてからだ。それまで我慢してくれ」
「そ、それはそうだな…………」
「では、子作りの代わりに夕食を振る舞おう」
カラン! カランカラン!
比南崎村にやって来たゼラ達三人。
村にある建物は、ボロボロになっていた建物を少し補強したものだった。
その建物の一階には、流木で出来た風鈴がある。
カランカラン! カラン!
ゼラ達は、その風鈴に癒されながらローテーブルを囲んでいる。
ゴゴン!
「どうぞ! この村の名物。豆乳塩麺!」
ローテーブルに六つの丼が置かれた。
白いスープの中に半透明の麺。それと、海苔とわかめとアサリが入っていた。
「いただきます!」
「いただきます!!」
カラン! カラン!!
「ズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズッ!」
「ズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズッ!!」
アスロのお父さんが落ち着いてすする中、ゼラとアスロはそれより豪快に麺をすすった。
長い無間地獄地獄でお腹が空いたのだろうか?
つらそうだった二人の顔は、一気に明るい笑顔に変わった。
「ズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズッ!」
「ズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズッ!!」
人間の女の子も麺をすすった。
いつもの慣れた味なのだろう。
丼で顔を隠すようにすすっている。
一方、ゼラ達三人はトッピングの方を食べ始めいている。
「はあっぐ!」
「はぐはぐ!」
「はぐうっ!」
「むぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐ……」
「むぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐ……」
「むぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐ……」
「ゴクン…………………………んん!」
「おお! 外出で冷えたからだが温まるよ!」
「懐かしい……クリーミーな味わいね」
「海苔とわかめのおかげで旨味がグーンと増している。それに、歯応えのある米粉麺がさらに味を濃くしているね!」
「ゴクゴクゴクゴクゴクゴクゴクゴクゴクゴクゴクゴクゴクゴクゴクゴクゴクゴク……」
「ゴクゴクゴクゴクゴクゴクゴクゴクゴクゴクゴクゴクゴクゴクゴクゴクゴクゴク……」
「ゴクゴクゴクゴクゴクゴクゴクゴクゴクゴクゴクゴクゴクゴクゴクゴクゴクゴク……」
「ゴクゴクゴクゴクゴクゴクゴクゴクゴクゴクゴクゴクゴクゴクゴクゴクゴクゴク……」
「ゴクゴクゴクゴクゴクゴクゴクゴクゴクゴクゴクゴクゴクゴクゴクゴクゴクゴク……」
「ゴクゴクゴクゴクゴクゴクゴクゴクゴクゴクゴクゴクゴクゴクゴクゴクゴクゴク……」
「プファァァァァ…………………………!」
「プファァァァァ…………………………………………!!」
「フアァァァァァァ………………………………!!!」
「ごちそうさま!」
「ごちそうさま!!」
「ごちそうさま!!!」
嬉しそうにスープを飲んだ六人。
罪悪感を感じさせないような優しい味をしていた。
そんな楽しい時間は、そろそろ終わりを迎える。
「それじゃあ、魔境南村に行くね」
「蠅の化け物。ここに泊まらないのか?」
「黒い犬の化け物さんが待っているんだ。だから、早く行かないと」
「そうか、また合おうな!」
「うん!」
タッタッタッタッタッタッタッタッタッタッタッタッタッタッタッタッタッタッタッ……
カランカラン! カランカラン!
流木の風鈴の音が鳴る建物。
それから別れを告げるようにゼラ達は魔境南村へ向かった。
「スキは迷子になってないかな?」
「スキを信じなさい」
「うん!」
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