狂信茶屋線下り② 愛眼茶屋駅の目玉二度焼きそば弁当

 狂喰姫駅を出発して一時間半。

 ガタゴーーガタゴーーガタゴーーガタゴーーガタゴーーガタゴーーガタゴーーーー……

 カンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカン!

 ガタゴーーーーーーーー…………

 キイィィィィィィィィィィィィィーーーガッタン!

 狂信茶屋線で移動していたトレインガールベルゼブブ。

 踏み切りを越えた先の愛眼茶屋駅に着いた。

 そこには、体中に無数の目ついた人がたくさん。

 幼女からお姉さん、少年からお兄さんまでたくさんの目を持っている。

「初めて見るモンスターね」

「魔豪国南部では見たことがない」

「ここも、上りには無かった駅か?」

「確かに上りでは無かったよ。踏み切りだけだった」

「そう言えば、ゼラは透視魔法を使ってなかった?」

「もちろん! この駅の地下にお弁当屋さんがあるよ!」

「じゃあ、行ってみましょう!」

「うん!!」

 タッタッタッタッタッタッタッタッタッタッタッタッタッタッタッタッタッタッタッ……


 タッタッタッタッタッタッタッタッタッタッタッタッタッタッタッタッタッ……スタッ!

「よし、着いた!」

 狂信茶屋線を出て急いで地下通路にやって来たゼラ達。

 三人の目の前には、体中に無数の目した茶色いポニーテールと爆乳のモンスター娘がいた。

「はいどうぞ!」

 ザザッ!

「ありがとうございます!」

 ハンマーを背負った鬼の幼女が、買ったお弁当を持ってホームへ移動している。

「あの子も、魔豪国南部では見たことがないわねぇ」

「ひょっとしたら、愛眼茶屋駅より先の駅にいるモンスター娘かもな」

「けれど、愛眼茶屋駅は上りでは行けなかったよ」

「電車を使わずに来たんだろう」

「幼女なのにタフだね」

「お客さん! 並んでますか?」

「ごめんごめん! 忘れた!」

 ゼラ達は話を途中で終わらせた後、弁当の棚を見た。

 そこには、紅しょうがといか明太とペペロンチーノの三種類の焼きそば弁当が並んでいる。

「目玉二度焼きそば弁当各種600Gだよ!」

「あたしは、いか明太!」

「オレは、紅しょうが!」

「僕は、ペペロンチーノ!」

 ジャラン!!!

「ありがとうございましたーーーー!」

 タッタッタッタッタッタッタッタッタッタッタッタッタッタッタッタッタッタッタッ……

 目当ての駅弁を買ってホームに戻ったトレインガールベルゼブブ。

 それを見ていた無数の目を持つモンスター娘は、不敵な笑みを浮かべていた。

「百々目鬼族の策にハマるとはな。新メニューを二つ増やしてよかったわ。ククククククククククククククククククククククククククククククククククククククククククククククク……」


 ガタゴーーガタゴーーガタゴーーガタゴーーガタゴーーガタゴーーガタゴーーーー……

 狂信茶屋線に急いで乗ったトレインガールベルゼブブ。

 もともと、乗っていた電車のお客さんが多かったのだろうか?

 直ぐに、ローテーブルのところに戻ってくることが出来た。

 パス!

「いただきます!」

 パス!!

「いただきます!!」

 カパッ!

 お弁当箱を開けたゼラ達。

 箱のイラストには無かった、うずらフライ串がそれぞれ三本入っていた。

「やれたぁ………………」

「想像してたよりデカ盛り」

「だったら僕がうずらフライ串を食べるよ」

「ありがとう! けれど、味も知りたいから二本あげる」

「オレは、玉子が好きだから一本だ!」

 ツッツッツッ!

「では、うずらフライ串からいただこう!」

 ツッギュッ!

「むぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐ……」

「むぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐ……」

「むぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐ……」

 ツッギュッ!

「むぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐ……」

「むぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐ……」

 ツッギュッ!

「むぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐ……」

 ツッギュッ!

「むぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐ……」

 ツッギュッ!

「むぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐ……」

 ツッギュッ!

「むぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐ……ゴクン……………………………おお! 全部うずらの玉子だと思ってけれど…………」

「根元の一個だけが」

「タルタルボールね!」

「ズルい料理だけれど」

「過度な味付けじゃなくて美味しい!」

「うん!」

 カラン!!!

 うずらフライ串を食べ終えた三人。

 次は、メインの目玉二度焼きそばを食べた。

「ズズッ! こりゅこりゅこりゅこりゅこりゅこりゅこりゅこりゅこりゅこりゅ……」

「こりゅこりゅこりゅこりゅこりゅこりゅこりゅこりゅこりゅこりゅこりゅこりゅ……」

「こりゅこりゅこりゅこりゅこりゅこりゅこりゅこりゅこりゅこりゅこりゅこりゅ……」

「ゴクン………………………………んん!」

「唐辛子やにんにくや塩コショウに玉子が混ざって甘辛!」

「シーフードの海に玉子の甘味が混ざってまろやか!」

「まるで、焼き酸辣湯! 紅しょうがの酸味を玉子が和らげてるよ!」

 カラン!!!

「ごちそうさま!!!」

 目玉二度焼きそば弁当を完食したゼラ達。

 三人は、お腹を叩きながら休憩した。

「うずらフライで大盛りにするなんて、ズルいサービスね」

「だが、これが百々目鬼族の考え方だよ!」

「ええ?!」

 愛眼茶屋駅のお弁当屋に対して皮肉を言っていたアスロ。

 彼女が後ろ向くと、愛眼茶屋駅のお弁当屋さんにそっくりモンスター娘がいた。

「だ、誰なの?」

「あたしは、愛眼茶屋駅のお弁当屋さんの双子の妹で百々目鬼族だ」

「あ、そうだった…………なんのモンスターか聞くのを忘れていたよ」

「改めて、聞くけれど百々目鬼族とはなんなんだ?」

「よくぞ、聞いてくれた黒い犬の魔法少女。百々目鬼族は、お金と関連がある鬼のモンスター。お金を稼ぐためにいろいろと工夫をするものだ」

「てことは、あのうずらフライ串は?」

「こっそり入れた無料サービスだよ。お姉さんは普段、焼きそばだけで販売するからね」

「しかし、サービスしようと決めただろう?」

「蠅の魔法少女。それは聞かない方がいいぞ」

「どう言うこと?」

「百々目鬼の情報収集の方法は教えてはいけない。お客さんを楽しませるサプライズのためにな」

「お店やるためにも、秘密は必要なのね」

「ああ!」

 百々目鬼娘と話をしていたトレインガールベルゼブブ。

 しかし、百々目鬼娘の目は姉の百々目鬼娘の目と繋がっていた。

 作戦一部がバレた姉の百々目鬼娘は、悔しそうにトレインガールベルゼブブを見つめている。

「チッ! 妹のやつ、うずらフライ串のことをバラしやがって!」


 

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