狂信茶屋線上り② 天ノ転治駅の天邪鬼弁当
妖狐茶屋駅を出発して二時間。
ガターーガターーガターーガターーガターーガターーガターーガターーガターー…………
トレインガールベルゼブブは、ずーーーと狂信茶屋線に乗っている。
しかし、駅弁がある駅はどこにも見当たらない。
ガターーガターーガターーガターーガターーガターーガターーガターーガターー…………
しかも、狂信茶屋線には異変が起こっていた。
地面が上で空が下。
まるで、銀河鉄道のように空中を走っているのだ。
ゼラ達は、一時間前に異変に気づいていた。
しかし、電車は走行中。
後戻りは出来なかった。
「お弁当屋さん、見つからないね」
「この異変、なんとかならないの?」
「仕掛け人を止めなきゃどうしようもないだろう?」
「そうね、スキ!」
キィィィィィィーーーーーーーーガタッ!
狂信茶屋線が天ノ転治駅に着いた。
そこは、ホーム電車と同じ向きだった。
しかも、そのホームには二本角が生えた黒いボサボサ髪の鬼がたくさん。
幼女からお姉さん、少年からお兄さん。
いろいろ鬼がたくさん集まっている。
ガタン!
ゾロゾロゾロゾロゾロゾロゾロゾロゾロゾロゾロゾロゾロゾロゾロゾロゾロゾロゾロ……
ドアが開いた共にお客さん出入りした。
それと同時に、お弁当屋さんが入ってくる。
カッカッカッカッカッカッカッカッカッカッカッカッ………………
空中だと言うのに、鼓膜に届くほどの大きな足音が聞こえる。
そして、やって来たお弁当屋さんは、エプロンで隠したところと隠していないところ反転した逆エプロンの爆乳鬼娘だった。
「あなた鬼娘?」
「ああ、鬼娘だよ。嫌違うよ。天邪鬼娘だ!」
「一人ツッコミみたいな自己紹介ね」
「あたしには、バディがいるよ!」
「一人で弁当を運んでいるじゃない!」
「じゃあ、1970Gの天邪鬼弁当をちょうだい」
「はい! 無料サービス!」
ジャラン!
「お金は後で返すからな!」
ジャラッジャラッジャラッジャラッジャラッジャラッ!
「そのお金は君の物だよ」
「会話がカオスだな」
「これが、天邪鬼の珍しい特徴なんだね」
「魔豪国南部に来て欲しいわ」
「魔豪国南部は、真面目な人が多いから大変だよ」
「そうね!」
「とにかく、お弁当を食べよう!」
「うん!!」
カパッ!
ゼラは、大きくて平たいお弁当を開いた。
「ええ?!」
なんと、おかずは、れんこんを肉で挟んだ揚げ物と、肉団子。そして、おやつはプリン。それ以外は、白いご飯のみだった。
「これじゃあ、地味すぎる」
「絵に映え無いはね」
カラカラカラッ!
「どうした? ゼラ?」
「この容器、外れるよ!」
「容器が外れる? そうか!」
スキは、容器が外れる仕掛けあることを思いついた。
カバッ!
一度、フタを閉めて慎重にひっくり返し、そしてゆっくりとフタを開けた。
カパッ!
「おお!」
「おぉ!」
なんと、海老や玉子やこはだ、とびっこやしらすがたくさん入っていた。
「ちらしずしだったんだ」
「やはり、天邪鬼らしい仕掛けあるらしいな」
「では!」
「いただきます!」
「いただきます!!」
ゼラ達は、おかずから順食べていった。
最初は、肉団子。
「ザクッ! おお!」
「どうしたの、ゼラ!」
「中に、キャベツが入ってる!」
「どれどれ!」
「ザクッ! おお!」
「ザクッ! おお!」
「むぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐ……ゴクン…………………………やはり、天邪鬼らしい仕掛けがあったね!」
「逆ロールキャベツかぁ」
「新しい発見ね!」
次に、れんこんを肉で挟んだおかず。
しかし、見た目でどんなおかずかを予想できた。
「これは、肉の挟み揚げだね」
「れんこんの挟み揚げの逆なのね」
「けれど、見た目もいけれど味だ!」
クウオッ!
「むぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐ……シャリ! おお!」
「れんこんの食感が残っているわね!」
「けれど、肉も十分の固さだ。これ美味い!」
次は、ちらし寿司。
「むぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐ……」
「むぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐ……」
「むぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐ……」
「ゴクン………………………………んん!」
「シャリシャリでつぶつぶでプリプリ!」
「それに、甘酸っぱさやがとてもいい!」
「こう言うお寿司も悪くはないな!」
「むぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐ……ゴクン………………………………」
最後に、プリンをひっくり返そうとした。
しかし、フタを開けた瞬間ある異変に気づく。
カパッ!
「んん…………んん? 甘い匂いがしない…………」
「どうしたのゼラ?」
「これは、茶碗蒸しだ!」
「嘘だろ? これはプリンだ!」
「じゃあ、スキが先に食べて!」
「わかった!」
カオン!
スキは、小さなスプーンで黄色いプルプルしたものを食べた。
「むぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐ……ゴクン………………………………甘くない…………これは、茶碗蒸しだ!」
「味まで反転しているわね!」
「やはり、天邪鬼らしい仕掛けだったね!」
その後、ゼラ達は茶碗蒸しを分け合って食べた。
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