第9話 女子高生のわたし、戦艦の艦長に… ⑨
わたしは、再びブリッジにやってきた。
さっきは、成り行きで。
今度は自分の意思で!
わたしのせいで、巻き込んでしまったのだから、わたしが責任を持って護らないとっ!
麗玲さんは…
壁に寄りかかってる…
けど、お酒は飲んでない。
「アリス!対空砲火開始ッ!敵は?」
先ずは、相手を識る事。
さっき麗玲さんも言ってたわ。
『敵を知り己を知れば百戦危うからず』
孫氏の兵法だっけ?続き、と言うか、他は知らないっ!
「はい。先程戦闘した羽虫タイプ、蜂タイプが先行しています」
なるほど…
「よしっ!じゃあ、先ずカノン砲で、一気に…」
「マスター。カノン砲ですが、砲身の冷却処置及びオート整備が間に合っていません。後1度使った場合、再発射可能まで、5分の時間を有します」
な、なんですとっ!
頼みのカノン砲が…
「ですが、副砲のビーム砲の解凍が間に合いました。カノン砲には射程も威力も劣りますが、小回りの利く艤装となっております」
ま、迷う…
カノン砲で敵の第一波にある程度ダメージは与えられるハズ。でも、もし、5分以内にムカデみたいな大型の蟲が現れたら…
麗玲さんを見そうになる、わたし。
ううん!
考えられる事は自分で考える!
間違ってたらあの人は、舌打ちの1つでもして文句言ってくるハズ!
よ、よ~しっ!
「アリス!カノン砲発射です!」
「おい」
きっ、来た!
やっぱり、来たッ!!
「どういう考えだ?」
流石のツッコミ。
うっ…
うーんと…
「先ず、多くの敵を倒せるからです!大きいのが出てくることを想定して、艦を後退させながら蟲の群れとの間合いを測ろうと考えました」
少し黙る麗玲さん。
「そうか。それなら、悪くないだろう」
よかった。怒られるかと思った。
「よ~し!今度こそカノン砲、はっ…」
このタイミングでブリッジの扉が開く。
こ、今度は何?
そこには、ゼェゼェと息を切らせたヒメカと、
「え、エリィちゃん…先生連れてきたよ…」
そう、ナギサ先生がそこには立っていました。
「エリィシアさん!お待たせしてごめんなさい!話はヒメカさんから聞きました!先生も操舵士ですからね、一緒に戦いますっ!」
じ~ん…
先生、来てくれた。
嬉しい…
それに、こんなに凛々しくて頼もしいナギサ先生、始めてだわっ!
「大丈夫です!先生、予習してきましたから!」
恥ずかしい過去、触れられたくない歴史を晒して自爆して、出て行った後に、そんな事してたなんて…
「お願いします、先生。え~っと、今からカノン砲を撃ちます!その後、蟲達との距離を取るため後退をお願いします」
「分かりました〜」
先生も準備万端みたい。
でも、ブリッジで、そのなんと言いますか、あの『獣性』の解放だけはご遠慮ください。ホントに。
「アリス!敵中央へ、カノン砲発射っ!」
発射されるカノン砲!
予測通りに蟲の群れの中央部分を吹き飛ばす。
「マスター。これより、5分間、カノン砲は使用不可となります」
うん!わかってる!
「先生!後退を始めてください!」
「はい〜」
スムーズに後退を始めるイルダーナ。
これが、特殊大型宇宙船舶免許1級の実力?
わたしなら、動かし方すらわからないのに。
「よし!では、両舷からのミサイルを…」
「駄目だ。ミサイルは温存しろ。ビーム砲で中型を中心に狙え」
うっ…
ミサイルで一気に、と思ったけど、ダメなのね。
数に限りがあるからかしら?
「はいっ!アリス、ビーム砲で中型種を中心に攻撃してっ!」
「畏まりました」
麗玲さんの指示を信じて、わたしはビーム砲での攻撃を指示。
放たれるビームの束。
羽虫にも命中したけど、羽虫は即蒸発、蜂型に命中!その体の半分くらい吹き飛ばしたわ。
普通、半分くらい体が吹っ飛べば行動できないものね。
なかなかの威力、だと思う。
きっと、麗玲さんはビーム砲の威力も確かめたかったんだ。
とりあえず、半分くらい吹き飛ばした蟲を放っておこうとしたら…
う、うげぇ…
羽虫が群がって…
くっ
喰ってるぅぅぅぅ〜っ!!
気持ち悪いっっっっ!!!
え?
共食いするの?混沌蟲って?
しかも、共食いした羽虫が、少し大きくなって…
嘘でしょ?蜂型に変態したよ!?
これ、撃ちもらすと、その死骸とか食べて、雑魚蟲がパワーアップするってこと?
「あれは、予想外だな。おい!中型種を狙う時はなるべく2発の連射か十字砲火で撃って確実に仕留めろ!できるか?」
麗玲さんがアリスに指示出してる。
あれは、ヤバい生態らしい…
てか、ヤバい。映像的にも気持ち悪いし…
「畏まりました。孫中佐。指示の通りの方法で中型種を狙います」
アリスもすんなり承知した。
成る程。きっとわたしが作戦参謀に任命したから、なのかな?
蟲達との攻防は続く。
撃ちもらせば共食いパワーアップ、というか進化?が待ってると思うと、緊張がすごい。
あっ!ビームが蜂型をかすめたわ。致命傷にはなってないけど。
うん、嫌な予感…
すると、今度は蜂型が羽虫を捕まえて食べだした。
何匹かムシャムシャと食べると…
体が、再生した…
絵面が気持ち悪すぎる…
今度は共食い再生…
なかなか、うん。さすが、蟲。
特殊能力がとことん、気持ち悪いわ…
「く、来るっ!」
「と、取り舵します!掴まってっ!!」
突然、ヒメカが予知?
それと同時に先生が勢いよく舵を回す。
艦首が向きを変えると、ブリッジすれすれを何か液体の様なものが掠めていく。
その、液体が蜂型に命中。
うん、フレンドリーファイアね、ありがとう!
その蜂は一瞬で溶けてしまいました。
よ、溶解液…
やっぱり、気持ち悪い。
しかし、ヒメカの予知と同時に攻撃を予測して、舵を切るってすごいことなんじゃないかしら?
先生の『野生の勘』なのかな?
「と、蜻蛉。大きくて、速い…」
ヒメカが続ける。
「マスター、索敵捕らえました。モニター出します」
アリスが索敵レーダーの横にその新たな蟲を映し出す。
うん、デカい、蜻蛉ね。
新たな蟲の出現にブリッジの緊張が高まるのでした。
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