二章01話 グラニエッゾ碑文

[newpage]#01 白の聖女、グラズン・六花ろっか

<グラズン・六花ろっか

 グラズン・六花ろっか。元々は、アンデッドの互助組織、深淵の躯を結成した、最古参のナイト・リッチである。八欲王と竜王達の戦いに巻き込まれ、国は滅び去った、神殿の聖女達は生き残ったが、同じく生き残った者達に襲われて命を落としていった。抵抗したことで、暴力の果てに、嬲られ殺された私は、瘴気に溢れるように、アンデッド・グールとなって、襲ってきた者達も、生きていた聖女達も喰い殺していた。


 グラズン・六花ろっかとしての意識が戻った時、私六花ろっかは、滅び去った国で、ただ一つの動くモノとなっていた。私は、滅び去り、廃墟となった王都を、空虚うつろな想いで見ていた。


 すべてのアンデッドが、生者を憎み襲って、殺すモノというのは、間違っている。アンデッドのすべてが、命を憎むモノではないし、私グラズン・六花ろっかは、滅びたくない・・・という想いで、必死に生きていた。


 アンデッドとなったことで、生気プラーナを嫌い、瘴気マターを好むのは確かで、生気プラーナを嫌うことが、生者を憎み殺す行動となるのも理解していた。

「生死の狭間はざま、世界のすべてを、知りたい」

果てしない、知識欲・・・アンデッドとなった身体には、世界そのものを知るために、旅をするようになった。


[newpage]#02 深淵の躯

 知を求めて様々な国を流離い、多くの国を渡り歩く中で、アンデッドが迫害され、滅ぼされていくのを見ていた。生者の中で隠れるように生きて、長きに渡って、知識を追い求める、いつしか私グラズン・六花ろっかは、第八位階を操るナイト・リッチとなっていた。


 知識を追い求めるアンデッドは、私グラズン・六花ろっかだけではなく、多くのアンデッドが、知識を追い求めていた。都市に隠れ住むモノや、人里離れた場所に居を構えて、アンデッドで身を守るモノ、様々なアンデッドが知識を追い求めていた。


 “深淵の躯”は、アンデッドの互助会として、四人のナイトリッチ三人のエルダーリッチから、相互扶助組織として始まった。人里離れた小城で結成し、参加者の名前を石板に刻み、組織として活動を始めた。百年ほどの歳月が経過する中で、幹部となる内陣と、協力者としての外陣が形成され、奪い合うのではなく、助け合い協力する組織として、緩やかに機能する組織が、“深淵の躯”だった・・・


 後に名前を刻んだ石板は、グラニエッゾ碑文と呼ばれるようになった。

<グラズン・六花ろっか

碑文の最初に、私の名前が刻まれた。


 いつの間にか魔力を持った碑文は、メンバーの変動が、自動で刻まれるようになっていた。だけどアレが、絶対支配者として、“深淵の躯”に君臨したが、碑文にアレの名は、刻まれなかった。

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