幕間 マジカル・でいずⅡ
魔法少女対抗戦 前編
魔法少女は使う魔法の種類でざっくり二つに分けられる。戦闘系か非戦闘系。俺……は除外するとして、セッカやヒマリは分かりやすい戦闘系。魔法少女の7割くらいは戦うための魔法を持っている。
逆に非戦闘系……有名どころだとミラやミントハートなんか。彼女らは戦闘能力こそないが、それなりに有用な魔法を持っている。縁の下の力持ちだ。
そして戦闘系の魔法少女には前線での切った張ったが要求されるので、日々の訓練は欠かせない。過酷なシフトや異界遠征を乗り切るためには相応の実力が求められるのだ。
その時に必要なのは師匠の存在。新人の魔法少女達は最初に先輩魔法少女の元で指導を受けることになる。ここで先輩ガチャで当たりを引くと、手っ取り早く強くなれたりなれなかったり。
俺? 俺は先輩ガチャSSRだ。偉い人(おっちゃん)とのコネがあるからな。それに過去の実績のおかげか、基本的に新人お断りな異界攻略にも俺が引率することで参加することができる。危険地帯に連れ回してあげるね!
……冗談はさておき、強くなるには経験を積むのが大切。今日はそんな魔法少女達の訓練の風景をお目にかけよう。
◇
ここは中部地方のとある都市。田舎ではないが都会でもない。そんな絶妙な塩梅の地域だ。数年前に降臨した
例外的に魔法少女は活動することができるので、魔法省はこれ幸いにとこの場所を訓練区画に設定。そうしてここは魔法ぶっ放しゾーンになったのだ。
「本日の演習でアナテマ役を務めるセッカです。よろしくお願いします」
ここに集ったのは30名あまりの魔法少女。今日の演習のテーマは市街地戦。都市部に現れた
「カステルさん……こ、これって、大丈夫なんですかぁ」
「何が?」
「難しいこと言ってますけどぉ、要はセッカ先輩を私たち全員でボコるってことですよねぇ」
横にいるヒマリが不安そうに聞いてくる。その認識であってるけど、ボコるって表現はどうかと思うぞ。学校で避難訓練やっただろ、不審者が入ってくるやつ。あれの不審者役ってだけ。
それに演習にもリアリティは必要だから。その点セッカは単騎で
「では5分後に私が暴れ出すので……制圧してください」
「聞いた!? 2分で作戦立てるよ!」
「近接系はこっちで固まってー」
「地形も生かしたいよね」
輪になってワイワイする魔法少女達。俺もその輪の中に入ろうとしたが、「あ、カステルさんは……遊撃で……」と柔らかく追い出された。解せぬ。
ここにいるのはオフの日も訓練に励みたいという戦闘狂……熱心な魔法少女だ。ちなみに俺とセッカはとある事件のせいで謹慎を食らっているので、こうして後進の育成のために骨を折っているのだ。
そして数分後、ようやくフォーメーションが完成した。仁王立ちするセッカを中心に円を描く。全員がセッカから距離を取りつつぐるっと囲んだ形だ。フルーツバスケットかな?
セッカが動き出した瞬間に全員が魔法をぶっぱして勝つ、という単純明快な作戦。脳筋にも程がある。
「カウントします! 3、2、1――」
「
「
「華盛りッ」
「雷鳴六華!」
「加速開始」
「
おびただしい量の魔法が視界を埋め尽くす。アホみたいな光量と爆音。思い思いの全力をぶつけた結果、360°隙のない包囲が完成した。
今にも弾けそうな魔法が収束する時、バカみたいな火力がセッカを吹き飛ば――
「
――余裕で平気だった。極寒の魔法がいとも容易く世界を染め上げていく。唸る豪風。迫る魔法を包み込むように、火力で上塗りしていく。
この演習は新人が中心で、主力となる面子はいない。だからセッカが無双する条件は整っている。
「ッ! 追撃! 急いで!!」
初撃でざっくり半数が氷漬けになった。比喩でも何でもなく、迫る吹雪に呑み込まれたのだ。それは季節外れの雪化粧。A級上位が魔法を使えば、誰もそれを止められないのだ。……一人を除いて。
「
作戦も駆け引きも意味を成さないセッカのバ火力に、一人だけ食らいついてる魔法少女がいる。
……あれ、きみそんなに強かったっけ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます