第10話 攻略法を探れ


「私ね、最近気になる子がいるんだぁ」

「部長は気になる子しかいないのでは?」



 部長――笹白チアキは魔法少女に脳を焼かれた一般人だ。その魔法少女愛は俺ですら驚くことがある。早い話が重度の魔法少女オタクなのだ。



「いいよね、セッカちゃん!」

「セッ……!!」



 眼鏡かちゃり。



「意外とさ、クール系の魔法少女って珍しいじゃん? 基本的に明るくて人懐っこい子が多いから、ああやって硬派な子は貴重かも。それにセッカちゃんは氷属性だから二重の意味でクールだね(爆笑)」



「落ち着いてるっていうか、地に足が付いてる感じが好きなんだよ。イベントとかでも一定のテンションで安定してるよね。総じて理性的な魔法少女って感じでもう好き。あのクールな子が同級生と絡むときに柔らかくなるのがいいんだよ。私は関係性のオタクだから、そういうのは全部拾っていきたいな」



 かちゃかちゃかちゃ



「……って、アキラくんもセッカちゃん推しじゃないの?」

「あー、まあ」

「隠さなくてもいいよ。私達はお互いの性癖全部知ってるでしょ? アキラくんは絶対にセッカちゃんがタイプだね」



 したり顔で指を差してくる部長。うーん、わりと好きな方ではある。



「まあ、セッカは華があるからな。やっぱ大事なのは実力だろ。2年足らずであそこまで上り詰めたのは才能の塊だよ。当たりの妖精を引き当てた……っていう考え方もあるが、記録ログを見るかぎりそもそも相性が抜群だな。あれは天性の氷属性だろ。

 第一、セッカはクールなイメージがあると思うが別に冷静沈着じゃない。特に戦闘なんかではわりと大雑把だし。どちらかというと緻密な計画よりもシンプルな力押しを好むイメージだな。セッカはごり押しが正義だと思ってる節があるだろ。つまりその戦闘時の豪快さがいいギャップだと思う。俺も最初はそのギャップでやられた。やっぱ素人目でも分かりやすいっていうか、シンプルな勝負が見てて気持ちいい」



「そうだよね! あの豪快さがいいアクセントになってる。他の氷系の子にはできない芸当だから、やっぱりセッカちゃんは特別だよ。やっぱり火力は正義だよねぇ」



「あれでいて緻密なコントロールが苦手じゃないのが味わい深いよな。イベントだとよく精巧な氷像を作ってたりするし、ごり押しだけじゃないってのが分かる。まあ、それができるのがA級上位なのか」



「あれいつ見てもすごいよねぇ。イベントに引っ張りだこになるのも分かるよ。私も一度生で見てみたいなー」



「部長、絶対見たら感動すると思うぞ。氷像作るときのセッカは戦闘のときとまるで別人だからな。繊細で、息をするのも憚られるくらい静かな空気を作る。……まあ、最後にはド派手にぶっ壊して観客を沸かすんだが」



「後片付けできてえらい」




 やばい、めっちゃ楽しい。やっぱ推し語りは正義だな!

 うちの学校は周りに魔法少女しかいないのでこんな話はなかなかできない。俺の他にも一般人がいてよかった……!



 言いたいことをまとめると、セッカは魅力的な魔法少女だってこと。俺は最初ビジュから入ったが、その圧倒的な実力に惚れさせられた。法外な火力と抜群の安定感。同じ魔法少女としても、セッカは頼りになる。



「……やっぱりアキラくん、好みがわかりやすい。清楚な子が好きなんでしょ」

「そりゃみんな好きだろ」

「だよねぇ」



 にへらと笑う部長に対して俺もサムズアップで応じる。清楚系が嫌いな人なんていないよね。



 ……ただし俺とセッカの関係はあまり良くない(絶望)。ちょっとした意見の食い違いというか、もっと根深いかも。なぜか久々に任務に行くことになったけど大丈夫か?




「なあ部長。これは仮定の話なんだが……」



 俺はちょっと神妙な顔で切り出す。



「仮に部長がセッカと話す機会があったとして、どうやって仲良くなる?」

「ほーん? 難しい質問だね」



 この際部長に聞いてみることにした。魔法少女を語らせれば部長の右に出る者はいない。きっとその圧倒的な解像度の高さと正確な分析力で応えてくれるはずだ。

 ヘイ部長。セッカと仲良くなる方法を教えて。



「でも答えは簡単。褒めればいいんだよ!!」

「褒め……る?」

「私の推理によるとセッカちゃんは向けられた好意を裏切らない。いや、裏切れないのかな? 素直で真面目な子だから直球勝負が大事」



 眼鏡かちゃり。



「セッカちゃんは好意には好意を、無礼には無礼で返す子なの。ファンの扱いも丁寧だし、友好的に接していれば間違いない。鏡映しって言うのかな? 相手の態度によって対応変わるのが露骨だよねぇ」

「へぇ……なるほど」

「あとは親切にされたら断りづらそう。めんどくさ――んん、熱心なファンに対しても丁寧に接してるから真面目なんだろうね。駅前のポケットティッシュも断らないタイプだよあれは」



 思い返せばそれっぽいシーンがいくつも浮かぶ。たしかにセッカは相手の好意を無下にできないタイプだ。



「だから私なら初対面でも引くほど褒めるかな」

「そんなシンプルな攻略法なのか」

「あくまでも私の分析だけどね。悪いことにはならないはず」



 思いがけずいいことを聞いてしまった。なるほどな。褒めればいいのか。



「どう、かな。ちょっと自信ないけど」

「いやいやいや、部長の深い洞察力には敵わねぇよ」



 そこまで語り終えると、一転してしおらしくなる部長。なんでちょっと自信なさそうなんだよ!



「ホント? 納得できたならよかったけど」

「完全に解釈一致だ」



 見えたぞセッカの攻略法。とにかく褒めればいいんだな!!!

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