雑魚四人パーティのランクがSの理由が分からない。

役立たずのエアコン

第1話 誰か殺してくれ

 「おめでとうございます!!貴方達パーティが、Sランクを達成しました!!」


 「うおぉおおおっしゃあぁ!!」

 「やった!やった!やった!」

 「ふん、まぁいつかは、この極地に来れると信じていたがな。」

 「………………………………」

 

「それではSランクパーティ達成の報酬として、貴方達には新たに魔王討伐の挑戦権を差し上げます!」


 「…遂に来たか。魔王討伐の夢!」

 「えぇ、そうね。ここまで来るのに相当な時間を掛けてしまったわ。」

 「他のパーティに出遅れないようにしないとな。」

 「…‥………………………………………」


「ってシカダ、さっきからどうした?お前だけ何も反応がないが…いや、嬉しすぎて言葉が出ないんだな!はっはっはそりゃそうだ。」

 「えぇ。私達のでここまで来れたもの。実際、感無量よね。」

 「だが、ここで止まるわけにはいかない。今こそ全員の力を…」


ただ一人、このパーティでただ一人だけが、何故か喜びも感動も露わにしなかった。


 「それでは、明日またこのギルドで正式なSランクパーティ昇格の手続きをします。12時までに、必ず訪れてください!!」  


 「分かりました。いつもありがとうございます。」

 「いえいえ…それと…手続きが終わったあと、時間ありますか?」

 「えぇ、ありますよ。」

 「それでは…」


俺は今、いや、昨日からずっと考え事をしていた。このパーティ、通称グロリアのリーダー、アスター・ギルが変なことを言っていたのを覚えている。


 「俺さ、ギルドのお姉さんに言われたんだよね。」

 「まさか、また夜のお誘いじゃないでしょうね?もう聞き飽きたわよ。」

 「違う違う!聞いてくれ、これは俺達の今後の道という道を広げることだ。」

 「広げるのは穴、ではなく?」

 「いいか、よく聞け。このパーティ、グロリアは明日に……Sランクパーティに昇格することになったんだ。」


 「「ええぇぇえええぇええ!?!?!」」


という会話以降、俺の記憶は飛んでいた。ここまで聞けば、実力でのし上がり、魔王討伐メンバーの一員に加わるという名誉あることだと思うだろう。

 が、おかしいのだ。そう、おかしい。俺達のパーティは、組み始めてから2日。初めて出会ったも2日前。


 つまり既にこのメンバーで、Sランク…いや、もう一つ上のクラス、SSランク以上…SSSランクレベルの実力者がいるということだ。

 アスター・ギルの元々のランクは、Aランク。

 最初にやった!と喜んでいたカーナ・サマラのランクはC +。

広げるのは穴?と最悪な下ネタを言っていた奴、ルミナス・ゼーナはBランク。

 そして俺、シカダのランクはDランク。


これはパーティを組む前に、みんながそれぞれ自己紹介した時に言っていたことだ。


…つまりだ、この四人の中で誰かが嘘をついているということになる。

では誰が嘘をついているのかというと…


「おいシカダ!!」

 「ッ!!ど、どうした?」

 「さっきからぼーっとしすぎだ。余韻に浸るのは、打ち上げの時でいいだろ?」

 「ごめんごめん、もう大丈夫。」

 「よーしそうと決まればーー!!お前ら、明日の12時までずっと呑みあかそうぜ!!!」


 「「おーーーーーーー!!!!!!」」


 「すまん、俺体調悪いから、ちょっと休んでから行くよ。」

 「お、おぉ。そうか。気を付けろよ、」

 「うん。ありがとう。」

 「すぐ来いよ、シカダ。」

 「そうよ!みんなが集まってこそのグロリアなんだから!」

 「あぁ。」


……やっぱり、みんなが嘘をついているとは到底思えない。それほどまでにこのパーティは居心地がいい。



「ふぅ、とりあえず宿に戻ったものの、やっぱり打ち上げ、ついて行っても良かったかな。」


 いや、ひとまず状況整理だ。何かの不具合、いや誰かが嘘をついていた場合がやばい。

 何故なら、魔王討伐に行く道中で、嘘をついていた奴以外は全員死ぬ。魔王と対面する前に死ぬ。

 

 そもそもこのグロリア、元々は魔王を討伐したいという目標を掲げた奴らの集まり。俺もそうだ。

 せっかくの挑戦権、これは無駄にしてはならない。何も出来ずに死ぬわけにはいかない。だから嘘をついている奴の正体を暴いて、止めなきゃいけない。


 …まずは、嘘をついている奴が誰なのか、だ。

 一番可能性があるやつは、やはりリーダーのアスターだ。チームを組もうと言い出したのもあいつ、リーダーをやると言ったのもあいつ。


 もしかしたら魔王の手先で、一人でも冒険者の芽を潰せという命令を受けているのかもしれない。

 いや、それはない。魔王の手先ほどであれば、そんなことしなくてもとっくに俺らは殺されているはずだ。 

 

 なら、カーナか?いいや、一番ない。SSランク以上の到達者で、女子の記録はまだない。合計で五人ほどいると噂されているが、五人とも男という。


 じゃあ消去法でルミナス?いや、そんなやり方で嘘つきを決めるのはダメだ。


 クソッ、証拠がなさすぎる。アスターは、魔王討伐の挑戦権を貰えたらすぐ行くと、組む前に言っていた。時間がない。

 とりあえず、酒場には行こう。何か分かるかもしれない。


 *


 「ごめん、お待たせ。って、全員ベロンベロンだな?!」

 「あぁ?あ、シカダか。やっどきたなぁあー」

 「もぅわたしたちぃけっこうのんじゃった…」

 

 ルミナスは、寝ているのか。


 「ところで、いきなりですまないが、魔王討伐のことなんだが。」

 「おうよ…それがぁどうした?」

 「……延期、しないか?」

 「しない。」

 「…だよな。」


 提案を持ちかけた時、一瞬でアスターの眼差しが鋭くなっていた。酔ってはいるが、信念は曲げんぞと言わんばかりの目だった。


 「…まぁ、座れよ。お前も呑め。出発は明後日だ。今のうちにはっちゃけとけ。」

 「そうょ…シカ…ダ……ぐー…ぐー………」


 アスター以外眠った今なら、色々と聞けるチャンスかもしれない。


 「なぁなんで、延期しようって言った?」

 「…分からない。けど、おかしいと思ったんだ。」

 「…?何が?」

 「とぼけるなよ。あんたはSS、いやSSSランク到達者の一人だろ?!」

 「そんなわけねーだろ。だったらお前らとなんか組んでねーわ。」

 「…何が目的なんだ?」

 「ん、そうだな、俺たちは」


 「魔王討伐を心掛ける、仲間だろ?」


 違うんだ、いや、違くはないが…

言葉が詰まる。確かに、魔王討伐を心掛ける仲間だ。


 「お前が今何を思っているのかは知らないが、もし嫌ならここでパーティを抜けてもらっても構わない。それはかなり困るが…」

 「ッ!いや、違う!俺は……」

 「俺は?」

 

人を疑うという行為は、それほどに仲間を信用していないということ。

だが俺は信用している。たかが二日目のパーティだろうが、グロリアが何十年目のパーティだろうが、多分気持ちは変わらない。


 「…すまない、なんでもない。多分、俺の気持ちが膨れてただけだ。」

 「そうか、ならこの話は終わりだ!おらっ、酒を呑め!呑め!」

 「うわぁあぁあ、俺未成年だって!!!」


 信用しあって、笑い合って、だから俺達の仲間はすやすや眠っていて、こんなに居心地の良いパーティはもう今後ないだろう。 


 *


 だから、もう神様…やめろ……


 「おい、シカダ!なにぼーっと突っ立ってんだ!ルミナスは…」

 「そうよ!あんたも加勢しな……キャっ゛」


…あ


 「うわあぁあカーナ!!あぁ…クソォおお!」


 やめ、やめろ…行くな。もう立ち向かうな。


 「仇だあぁあぁあぁあだあぁ゛」


 「ダメ、ダメだああ!!!」


 グシュッ


 そんな音がした。

気付いたら敵は下半身だけを残し、頭部が消え去っていた。


 俺だけが残った。


 なんで、なんでなんでなんで。パーティに一人、SS以上の奴、いたはずだろ?

 なんで助けなかった。そいつは馬鹿なのか?死にたかったのか?


 「ガルルルル……グオオオ!!!」


 グジュッ


また似たような音がした。敵の死体は増えていた。みんな俺の前で死ぬ。敵味方関係なく死ぬ。

 誰が嘘をついているとか、もうどうでもいい。仲間を、仲間を蘇らせてくれ。

 

 誰か俺を、殺してくれ。



 

 




 

 

 


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