夢の続き

@suzuko_n

第1話 出会い

又いつもと同じ朝が来た。ここ半年俺は決まって同じ夢を見る。こことは少し違う、でもよく似た景色の街で化け物を倒している。

その夢はとてもリアルで目覚めても終始起こった出来事を記憶している。

俺の名は高坂ハル、探偵業を営む25歳、半年前彼女に振られ寂しい独身生活を送っている…いや…寂しくはないな、うん寂しくない。この半年は実に充実しているからだ。夢の記憶が俺の生活に何らかの変化をもたらしているらしい。彼女が去ったのも俺の変化に気がついたからだろう。毎晩同じシーンの夢を見る訳では無く同じ背景ではあるが夜眠りにつき、朝目覚めると夢の中の1日が終わっている。そして又夜眠りにつくと次の日の朝目覚める所から始まっている。夢の中でも進行形で毎日を送っているらしい。何故その事に気がついたかと言うと、あまりにもリアルな夢であった為、夢の中のカレンダーに現実世界の日付けを書き込んでおいたのだ。それをもう半年続けている。とても奇妙ではあるが不思議とそれが怖い事と感じる事は無かった。どちらかと言えば夢の中の方が充実しているからだ。現実世界に不満がある訳では無い、探偵業ということも有り事件がらみで警察からの依頼を受ける事もしばしば、スリルを感じる事もあるからだ。仕事では充実していたのだろう…しかし私生活ではたいして楽しみを感じる事が無く、恋人を構う事を面倒臭いと思うようにまでなっていた。それが彼女には面白くなかったのだろう。当然の反応である。俺が夢の中の生活に執着する理由は化け物を倒すというスリルともう1つ理由がある。夢の中で出会った1人の少年だ。この少年の名は蓮(れん)

年齢は17歳、色白でどこか儚げでとても綺麗な顔立ちをしている。蓮と出会ったのは化け物を探して裏路地を歩いている時だった。


「今日はやけに静かだな、もう昼前なのに1匹も出てこない」

こんな所に廃ビルあったんだな……いつも通ってる道なのに気づかなかった。

廃ビルのドアに手を伸ばした瞬間、そのドアが勢いよく開き中から1人の少年が飛び出して来たのだ。それが蓮だった。蓮はハルの顔を見ると「助けて…お願い助けて…」と手首をギュッと掴んだ。その必死な様子にハルは一瞬驚きはしたが次の瞬間には蓮の手を取りその場から走り出した。しかし逃げ続けていたのか蓮の体力が消耗していて逃げる距離を稼げず、すぐに蓮を追う化け物に追いつかれてしまったのだ。だがその追いかけて来た化け物を見てハルは愕然とした。

「人間…なのか?」

その化け物は人の姿をしていたのだ。金色の髪に赤い瞳の美しい人間は化け物とは程遠く気品さえ感じられる。そこはかとないオーラのような物をまとってハルを睨みつけている。

「何なんだ!お前は!何故この子を襲う、人間じゃないのか!」

すると男はその問いに答えた。

「お前には関係の無いことだ、その子を置いて去れ」

「はぁ?!何言ってやがる、こんなに怯えている子を置いて行けるかよ!」

ハルは化け物でも無いこの人間と戦う事を決意し蓮に後ろに下がるよう合図した。

人を殺す事になるんだな…そう思った瞬間男は目の前に立ってナイフを突きつけこう言い放った。

「もう一度だけ言う、死にたく無くばその子を置いて去れ、さもないとお前の命は無い」

男は驚くほど冷静な物言いだった。こいつは他の化け物とは違い感情や意思を持った人間のはず…だがこの人間離れしたこの動きはある意味化け物だとこの時ハルは直感した。

自分は負けない、いつでもお前を殺せるという前提で言葉を放ってやがる。でもここで引き下がる訳には行かない。

ハルは1歩後ろに下がりナイフを構えた。

接近戦では銃よりナイフだな


「何か困ってんの?アンタ」

「えっ!誰だお前って…沢北オビト?何でお前がここに?」

「えー何で俺の名前知ってんのアンタ」

オビトはそう言葉を発すると次の瞬間には目の前の男を蹴り飛ばしていた。男はオビトの一撃を受け後ろの壁にめり込んで動きを止めた。

「今のうちに行くよ」

オビトはこっちに来いと指で合図するとハルと蓮を自分の車の止めてある所まで案内し2人に乗るよう又指で合図する。

「あーアンタ助手席でお前は後ろ乗ってー」

「あ、ありがとう助かったよ」

「まあ、礼は良いんだけどさ、何でアンタ俺の名前知ってんの?どっかで会ったことあんの?」

そう来るよな…これは夢で現実の世界じゃないって言ってもわかんないよなー…

ハルは返答に困っていると後部座席から蓮が体を乗り出しハルの肩を掴んだ。

「ど、どうした?気分でも悪いのか?えっと名前は?」

「蓮です…助けてくれて有難うございました」

「俺は高坂ハルだ、それとこっちが…」

ハルはオビトの方を見て言葉を飲み込んだ

俺がオビトを紹介するのっておかしいよな…

「俺は沢北オビトだ、まあ…あんたは知ってんなら今更だろうけど」


やっぱりオビトは俺の事は知らない感じだよな

今は夢の中の事ってのは言わずに何とか誤魔化すしかないな…


こうしてハルと蓮は出会い奇妙な事に現実のオビトとは違うらしいもう1人のオビトと出会う事になった。

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