第168話 S-1 技術都市クロノスポートへの道 -4
アークでの航行中、ダイチはトリアスとレオンから戦闘や戦術に関するトレーニングを受けていた。
(アークでの旅は続く。
その間、俺はトリアスさんやレオンさんに、色々なことを教えてもらった)
アーク船内、トレーニングルーム。
トリアスとレオンが並び立ち、ダイチの指導にあたっていた。トリアスは武術の体術や心構えを、レオンは戦術シミュレーションや情報分析の基本を教えている。
真剣な表情で稽古に取り組む三人。
トリアスの槍が、ダイチの動きを正確に捉え、その技術を磨いていく。
「ダイチ。お前の動きには、武術の素養がある。
それを意識し、磨けば、お前の力はさらに高まるだろう。心構えも重要だ」
トリアスが冷静に指導する。彼の声は、厳しさの中にも、ダイチの成長を願う優しさが込められていた。
「はい、トリアスさん!」
ダイチの声が、トレーニングルームに響き渡る。
歴戦の戦士であるトリアスをはじめ、ほかの冒険者の仲間に比べると、ダイチはまだまだだ。戦闘中自分を護ることで精いっぱいというのが正直なところであった。
「古武術か……実家の……もっとまじめにやっておくべきだった…」
「ダイチ。君の分析力は高い。
そこに、我々の戦術、情報分析のノウハウを加えれば、君はパーティの頭脳として、さらに重要な役割を担えるはずだ」
レオンのバイザーには複雑な戦術図が展開され、ダイチの指示によって兵士たちが動いていく。レオンが冷静に指導する。彼の瞳は、ダイチの潜在能力を見抜いている。
「状況分析……戦術シミュレーション……
うう、ちょっと難しいけど……頑張ります!」
ダイチの声は、戸惑いと、それでもなお学び続けるという強い意志が込められていた。 ジュラや弥生が、ダイチのトレーニングを心配そうに、あるいは興味津々で見守っている。
彼女たちもダイチの成長を願っている。 ジュラが、ダイチのトレーニングを見つめながら、声をかける。
「ダイチ、頑張れー!怪我しないでね!」
「ダイチさん……あまり無理はなさいませんように」
ジュラの赤い瞳は、ダイチへの心配と、彼の成長への期待が混じり合っていた。
弥生の白い手は、ダイチの体調を気遣うように、微かに揺れている。
トレーニング後、ダイチが息を弾ませていると、トリアスは無言で冷たい水筒を差し出す。
その小さな気遣いが、ダイチの心に温かく響いた。
シルルがトリアスの隣にそっと歩み寄り、「あなたもお疲れ様でした」と優しく声をかける。トリアスは小さく頷き、その言葉に安堵したような表情を見せる。
「姉さま、デレデレだ~」
「!!」
ジュラのからかいに、シルルが真っ赤になった。
戦略シミュレーションが終わると、レオンはダイチに「解析は完了した。よくやった」と短く告げる。
続けてシータが、ダイチの癖を見抜いたように助言した。
「ダイチ。君は時折、思考が拡散する傾向がある。
一点に集中することで、効率はさらに向上するだろう」
ダイチはハッと顔を上げ、シータの言葉に深く頷いた。
シータなりの賞賛が込められていることを、ダイチは理解していた。
そう、成長のためには時には強い言葉も必要なのだ。
ジュラは、ダイチの傍らに駆け寄り、彼の顔にかかる汗を、手持ちのタオルで優しく拭った。
「ダイチ、すっごく頑張ったね!かっこよかったよ!」
彼女の明るい笑顔と、無邪気な賛辞が、ダイチの疲労を吹き飛ばすようだった。
弥生もまた、静かに近づき、手にした清らかな水を掌に湛え、そっとダイチの額に触れさせた。
「ダイチさん、お疲れ様でした。清浄な大地の力が、あなたを癒しますように」
彼女の言葉は清らかで、ひんやりとした水が額に触れる感触に、ダイチは心が安らぐのを感じた。
ダイチは三人の気遣いに感謝し、心の中で、この旅がもたらす絆の温かさを噛み締めた。
(旅の間、俺たちはアークの中で、色々な時間を過ごした。
みんなと話して、笑って……この船は、俺たちの家だ)
アーク船内、リビングスペース。
船の中心にあるこの場所はメンバーの交流の場である。
食卓には、自動調理システムで作られた、栄養バランスの取れた料理が並ぶ。その料理は、見た目も美しく、香りも豊かで、旅の疲れを癒してくれるかのようだった。
ジュラが、ダイチに話しかける。
「ねーねー、ダイチ!今日の料理、美味しいね!」
彼女は、満面の笑顔でダイチに話しかける。その瞳は、料理の美味しさと、ダイチへの喜びで輝いている。彼女は、目を輝かせながら、料理を頬張る。
ダイチが、料理担当のドロイド、あるいはシャルマやシュミットに感謝を述べた。
「ああ、美味しいな! シャルマさん、シュミットさん、いつもありがとうございます!」
彼の声は、心からの感謝が込められていた。
シャルマが、優しく微笑む。
「ふふ、どういたしまして。私なりに栄養バランスも考慮してあるわ」
彼女の顔には、いつも科学者としての探求心と、仲間への気遣いが浮かんでいる。
彼女は、グラスのワインを傾けながら、料理の味を確かめる。
まぁ、いつもこんなにおいしいかというと、それは別で、シャルマの独特の味覚は仲間たちの暗黙の了解、触れてはいけない話題になっているのだった。
シュミットが、誇らしげに言う。
「アークの自動調理システムも、改良を重ねているぞ」
彼の顔には、自身の技術で仲間たちの生活を豊かにできたことへの達成感が浮かんでいる。彼は、グラスを片手に、料理の出来栄えに満足そうに頷く。
シャルマの独特の料理に席巻されれば、別の意味でパーティの命運にかかわる。
そういう危機感が彼をここまで突き動かしていた。
アークの整備と同じかそれ以上の熱量をつぎ込んでいるようにも思える。
ガラス庭園。
弥生がガンテツの傍らで植物の手入れをしている。
ガンテツが静かにそれを見守っている。その巨体は、ガラス庭園の植物たちを優しく包み込む。
弥生が、ガンテツに話しかける。
「ガンテツ殿……この植物も、少しずつ元気になってきましたね」
彼女の白い指先が、ガラス庭園の植物に触れる。その指先から放たれる清浄な光が、植物をさらに輝かせる。その光は、弥生の優しさを映し出しているかのようだった。
ガンテツが、短く応える。
「……大地は……応える……」
彼の声は、低く、重く、大地そのものの響きを持っていた。彼は、弥生の手入れによって、植物が活力を取り戻していく様子を、静かに見守っていた。彼の瞳には、弥生への信頼と、大地への愛情が宿っていた。
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