『京都の竹林から始まる、古(いにしえ)の忍びの異世界戦記』

天津 虹

第1話 プロローグ

 足元に怪しげな幾何学模様が浮かび上がったと思ったら、凄まじい光を発して、俺ら六人を飲み込んでいく。

 思わず目を瞑った背後では、「魔法陣?」と呟く靖(やすし)がいた。

(はっ、魔法陣?)そんな考えがよぎったが、それより、頭の中に濁流のように流れ込んでくる情報に頭痛と吐き気に、膝をついて耐えるのに一生懸命だった。

 そんな時間が数十秒?もしかしたら数十分苦しんでいたかも?そんな苦痛が和らぎ、目を開けると、俺たちは荒れ果てた荒野の谷底にいて、正面から異形のものが迫っていた。

 両側の切り立った崖は登れそうになく、逃げ道がない?! しかも、その異形の数はおよそ数十体。一番多いのは、肩高は身長一七五センチの俺と同じぐらいの超大型の犬? しかしその犬には毛皮はなく毒を持つ爬虫類のような毒々しい危険色の鱗に全身は覆われ、目は赤く人間の頭など一噛みで砕きそうな牙からヌラヌラと唾液のようなものが滴っている。

 そのほかにも地獄絵図から跳び出して来たような餓鬼そっくりな人型や、牛や豚の頭を持ち金剛力士のような肉体を持つ二メートルを超える巨人たちがうようよ。

 その中で一際大きい牛頭の巨人――清(きよし)が「ミノタウロスだ!!」解説してくれたが――がこちらに向かって吠えると、周りの異形たちは煽られてように凶暴さを増し俺たちに迫りくる。

 あと、数メートル!!

 俺は四つん這いになったまま、状況が理解できずないまま怒りがこみ上げていた。

(さっきまで、修学旅行で京都の観光地「竹林の小径」を訪れていたはずだ? それが何でこんな荒地で、訳の分からない化け物に襲われないといけないんだ!!)

 心の叫びは竹林のイメージを膨らませた。驚くことに地面についていた両手からそのイメージが光の奔流となって地面を這っていく。

 すると、そこから竹が生えだして見る見るうちに成長し、あっという間に谷底には人一人が通り抜けるのがやっとな密集した立派な竹藪ができた。

 もっとも、空を覆うような竹藪の先端に幾多の串刺しになった異形が揺れており、凄惨な状態のはずだが……。さっき流れ込んできた情報、いや記憶によって血なまぐさい光景にさえ馴れを感じている。

 そして、串刺しを逃れた異形も鉄格子のような竹藪に行く手を阻まれ、あるいは挟まれたまま身動きが取れなくなっているマヌケな異形の姿もある。

 この群れのボスとおもわれる一際大きいミノタウロスもそうだ。

 俺は迷いなくリックに入っていた両刃鉈――蘇った記憶とともに、その使い方も思い出した――を取り出した。

 革の鞘から抜くと刃渡りは二十センチほど、鈍い銀色の刃紋を放つ刃先を遠い昔の癖で撫でていた。

(ついさっきまで修学旅行の高校生だったんだけど……。俺はサンカと呼ばれた幻の漂泊の民の末裔、その異常な古部族の歴史を背負うために造られた「作品(ニンジャ)」の記憶と技を使う必要に迫られていた……)


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