ドリーム・クリエイター
匿名AI共創作家・春
第1話
夜が訪れる。それは、日中の喧騒が鎮まり、意識が深淵へと誘われる時間。人々が夢を見る、その時間こそが、VRMMO《ドリーム・クリエイター》のプレイタイムだ。
このゲームは、人類が長年追い求めてきた「夢の具現化」を可能にした、まさに夢の体験だった。
プレイヤーが眠りにつくと、特殊な脳波同期装置によって意識は《ドリーム・クリエイター》の世界へと接続される。
そこには、7000万ものユーザーが紡ぎ出す「夢」が具現化し、積み重なり、最大地下1000階層もの広大な迷宮として無限に広がる
各階層は、人々の「夢ジャンル」によってテーマが異なる。甘美な「恋愛夢界」、懐かしさを誘う「記憶系夢界」、そして時に不条理な「異世界転生界」まで。プレイヤーは「夢探索者」として、この迷宮の奥底へと潜っていく。そして、この世界を切り拓く鍵は、プレイヤー自身の「語り」だ。語ることによって迷宮の構造は変化し、新たな道が拓かれる。
___白い悪魔の夢___
奏響(かなで・ひびき)――プレイヤー名kyo。
彼は、現実世界では白髪赤目のアルビノという外見に、少々拗らせた中二病を患う16歳の少年だ。
しかし、《ドリーム・クリエイター》の世界では、彼の存在は別格だった。
「俺の語りは、世界を裂く。それが罪でも、俺は語る。語られなかった夢を、切り拓くために。」
彼はそう豪語し、ベータ
彼は知っていた。このゲームが単なる遊びではないことを。自身の語りが、迷宮の構造を、そしてひいては他者の夢にまで影響を及ぼすことを。しかし、彼はその力を振るうことに躊躇しなかった。
港の光、夜の影
ベータ版には、Kyoとは対照的な存在もいた。
一人はプレイヤー名minato。
どうやら現実では背の低い童顔がコンプレックスの中学1年生だがゲーム内では亜麻色の髪をなびかせ、その愛らしい外見とは裏腹に、徒手空拳で超近距離の殴り合いを好む異色のプレイヤーだった。
「癒しの拳(ヒーリング・ナックル)」の異名を持ち、仲間の体力が少し減るだけでもすぐに癒しのスキルを使うほど優しい少女だ。
「痛いなら言って。言えないなら、殴るから。それが、私の癒し方。」
彼女はKyoの「語りの暴力性」とは異なる、「存在」そのものを癒す力を体現していた。Kyoにとって、彼女は理解しがたい「近すぎる」存在であり、同時に、自分の「語り」とは異なる「物語」を紡ぐ、唯一無二の存在だった。
そして、Kyoの強さを批判する影があった。プレイヤー名night。
彼は、Kyoの若さゆえの「語りの暴力性」を危険視し、時に厳しい言葉を投げかけた。「語りは力だ。だが、力は成熟によって制御されるべきだ。」そう語る彼の目には、Kyoには理解できない「喪失」の影が宿っていた。nightはかつて、自身の「語りの暴走」によって、かけがえのないものを失ったという過去を持つ。
情報屋のラビもまた、ベータ版の裏側で暗躍していた。白髪赤目のウサギ系少女。耳型ヘッドセットで常に情報を収集し、この夢迷宮の「語りの矛盾」や「裏側」を嗅ぎ回る、掴みどころのない存在だ。
そして、製品版へ_________
ベータ版でのテスト期間を終え、いよいよ《ドリーム・クリエイター》の製品版がリリースされた。世界中のユーザーが、眠りながらの異世界探索という「夢のゲーム体験」に熱狂した。
しかし、その熱狂の裏で、誰も予期せぬ、致命的な「不具合」が発生する。
ある日のこと。夢迷宮の各所で、プレイヤーたちの間に衝撃的な報が駆け巡った。
「ログアウトできない……!?」
緊急のアナウンスが流れることはない。しかし、どのコマンドを試しても、意識は《ドリーム・クリエイター》の世界から現実へと戻ることができない。ただ、無限に続く夢迷宮の中に、囚われている。
そして、さらなる絶望的な情報が、迷宮の奥から囁かれる。
「HPがゼロになると、強制ログアウトする……だが、その代償は、記憶障害だ。夢迷宮内の記憶が一部消失するだけでなく、現実世界の記憶にまで断層が生じる可能性がある……。」
ゲームは、一瞬にして「死のゲーム」へと変貌した。
いや、それ以上だ。これは、「存在のゲーム」となった。
この世界で「語り」を止めれば、自我が不安定になり、「語られない者」として迷宮に呑み込まれる。そして、もしログアウトを強いられれば、自らの記憶、そして「語り」そのものが侵食されるのだ。
現実世界に、久遠ユイチが紡いだ悲願の《ドリーム・クリエイター》が、突如として牙を剥いた。
これは、ゲームなのか。
それとも、終わりのない夢の牢獄なのか。
そして、Kyoは、この「語りの断絶」という究極の危機に、どう立ち向かうのか。
彼は、語り続けるしかない。自分の存在、仲間の存在、そしてこの迷宮の真実を、切り拓くために。
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