あの名前がわからない

服装編④ アンサー

　悪役令嬢のドレスでも取り上げましたが、今じゃ女子の服装に使われるイメージのフリル。

　しかしかつては、男性にも使われた装飾でした。

「襞襟（ruff）」

「ラフ」とも。洋服のシャツ、ブラウスの襟にフリルを付けたもの。貴族や裕福層がつけていた。「エリザベスカラー」と言ったら伝わる人もいるかもしれない。

シャツから取り外すことも可能。

「ジャボ（jabot）」

近世にヨーロッパで使われた、襞（フリル）の付いた胸の飾り。

当初は男性のワイシャツに使われたが、後に女性のブラウスやワンピースに使われた。

ネクタイのように使われるが、今では女性用ブラウスの場合服と一体化したものもある。

　コメント欄でも、「ジャボ」がよくあげられました。

　ジャポは貴族や王族、裁判官にも使われるイメージがありますね。検索をかけると「ジャボ付きブラウス」で売っている通販サイトもよく見られます。

　ですがフリルがついたシャツは、ジャボ以外にもあります！

　というわけで毎度おなじみ「モダリーナ」さんから検索！

「パイレーツ・ブラウス（Pirates shirt）」

海賊の服をイメージにしたブラウス。Vネックになっており、胸前を紐で編み上げる「ギリー・シャツ（Ghillie shirt）」のような襟周りや袖に大きなフリルがついている。

Wikipediaでは「Poet shirt（詩人のシャツ）」になっていた。貴族が下着として使っていたフリルシャツが原型らしい。19世紀に流行ったとか。

他にも袖をいくつも膨らませた「パフィー・シャツ」というのもあるらしい。

　富の象徴として貴族が身につけていたフリルですが、海賊も使っていたのでしょうか？

「キャバリア・ブラウス（cavalier blouse）」

騎士の服装をイメージした、大きめのフリルいっぱいのブラウス。

首、胸、袖以外に、肩周りまでフリルがあるのが特徴。

　職業系の名前がついたシャツ多いですね。

「プレーリー・ブラウス」

西部開拓時代の田舎をイメージしたブラウス。

胸元というより、肩から胸元にかけての切り替えにフリルやギャザーがほどこされた、「ビブ・カラー（ビブとはよだれかけ、胸当て）」のようなものが特徴的。田舎娘を意味する「ウェンチ・ブラウス」とも。

　田舎でもフリルは愛された、ということですね！

「ハビット・シャツ（habit shirt）」

乗馬用の女性用シャツ。スタンドカラーで、前身頃にフリルがたくさん使われている。袖より丈が短め。

　19世紀にはドレスの上に「ルダンゴト」という乗馬用の上着が流行っていたので、おしゃれな乗馬服が求められていたのかもしれません。

　フリルは15世紀のシュミーズの胸元に登場し、16世紀に襞襟が登場、18世紀には多くの洋服に使われるように。登場するの、結構遅めなんだなあ。

　ひだが大きめなものは「ラッフル」とか「フラウンス」とか言います（ひだ飾りの種類に関してはこちら参照https://kakuyomu.jp/works/16818792438190188555/episodes/16818792438960890914）。フリル単体にも色んな種類があるんですね。

　とここまであげて、一番近そうなのは何でしょうか。正直なところ、誤差のようにも見えます（おい）。

「ラッフル・カラー（フリル・カラー）」というのもあるみたいですが、地雷系・量産型と呼ばれるガーリーな服は、別に襟があったりするのですよね。

　というわけで「モダリーナ」の「トップス」から「胸当て、胸飾り」でふたたび検索。

「プラストロン（plastron）」

「ブザム（シャツ）」の一種。シャツの胸部分についている切り替えにフリルが装飾されたもの。

名前は「甲羅」を意味する。フェンシングの防具をさすことも。

「ブザム」とは「胸」という意味で、他にもプリーツ仕立てにした「プリーテッド・ブザム」などがありますね。タキシードに使われるやつ。

　というわけで、多分「プラストロン」が正解かなと思います。

　まあ多分誰も分からないので、「フリルブラウズ（シャツ）」か「フリルで装飾されたブザムシャツ」みたいな言い方になりそうですね！

【今回の話に役に立ちそうな本】

溝口康彦『新版 デザインの用語や特徴がイラストでわかる　モダリーナのファッションパーツ図鑑』マール社

溝口康彦『Men'sデザインの用語や特徴がイラストでわかる　モダリーナのファッションパーツ図鑑』マール社

（モダリーナが出している本）