第18話 歩み寄り③
「え、えっと……?」
琥珀が虎の姿になった理由が分からず。私は首を傾げた。琥珀は虎の姿になったのは『自分の気持ち』だと言ったが、虎の姿になることには如何いう意味があるのだろう。
「驚かせてすいません。その……昨晩、私を気遣って下さったので……」
「あ、あれは……私もが勝手にやりたいからやったことで……」
虎の姿のまま、お行儀良く座布団に座ると説明をし始めた。如何やら昨晩のクリスマスツリーの件に対しての気持ちらしい。確か琥珀との距離を縮めることが出来れば良いとは思っていた。しかし私は琥珀に見返りを求めていない。只、私が勝手にしたことなのだ。
「いえ、とても嬉しかったです。私が貴女にしてあげられることは多くありません」
「え……いや? 凄く充実した毎日を過ごさせてもらっているよ?」
琥珀は私の言葉に首を横に降ると、真っ直ぐに私を見詰める。
私は琥珀の言葉に眉をひそめた。何故ならば、琥珀が言うことに同意し兼ねるからだ。この異世界には琥珀の『生け贄』として捧げられたが、不当な扱いをされた覚えは一切ない。寧ろ好待遇で、優しく気遣われているのだ。電気を供給してもらい、電化製品も使用することも出来ている。最高のスローライフを過ごすことが出来ているのだ。
「貴女に不自由無く過ごしてもらうのは、当たり前のことです」
「は……はぁ……」
琥珀の凛とした声で、きっぱりと告げられる。神様と人間とでは価値観が違うようだ。責任感が強いようである。他の神様も同じ様な考え方なのかは分からない。しかし琥珀基準は、これが普通だと言う。私は取り敢えず頷く。
「それで……以前に。私の姿で……大きい姿になれないかと訊ねられましたね?」
「あ! そうだね!」
彼は次に琥珀の正体を知った時のことを口にする。確かに私は琥珀に大きい虎になれないか、迫った覚えがある。
「私は貴女の夫として、願いを叶える義務があります。どうぞ、お好きになさってください」
「えっと……触られるの、嫌じゃないの?」
神様だからなのか、琥珀は責任感が強いようだ。彼は私の前迄、やって来ると頭を差し出した。彼なりに私との関係を良くしようと、考えてくれている。しかし無理を強いるつもりはない。私は琥珀に確認をする。彼は私が大きな虎の姿になることを要求した際に、拒んでいたのだ。嫌なことを強制する気はない。私は琥珀が無理をしていないか確認をする。
「あ……あれは、その、貴女が近くに居て恥ずかしかったのです。それに……私の姿を見て怖がらせるかもしれないのが、怖くて……」
「? 自分から見たいと要求をしておいて、怖がるなんてことしないわよ?」
少し不安気に告げられた内容に私は首を傾げた。自ら要求したことに怖がるということはないだろう。だが小さい時の虎は、子猫の様で可愛いらしい。しかし大きな姿になれば、動物園で見かける虎の様に勇ましい姿だ。印象が変わることはあるだろう。そのことを琥珀は心配してくれたのだろう。
「それは良かったです。さあ、どうぞ」
「じゃあ、遠慮なく……」
私の言葉を聞くと、琥珀は畳に寝そべった。私が撫で易いようにしてくれたようだ。私は琥珀の言葉に甘え、彼の背中に触れた。
「ふわぁ……。ふわふわだ……」
溜め息混じりに、感想が漏れた。小さい虎の姿だった際も、柔らかい毛だった。しかし体が大きくなったことにより、毛のボリュームが増え触り心地が更に良くなっているのだ。
「ふふっ……喜んでもらえて嬉しいです」
「ありがとう、琥珀」
琥珀からも楽しそうな声が上がり、お礼を伝える。
鰻美さんたちが、お昼ご飯の準備が出来たと声をかけられるまで琥珀を撫で続けた。
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