第4話 シアワセの時間

 とある平日のことである。


 二限と三限の間の休み時間。春利が教室から私を連れ出して、校舎の隅にある、茶道部の部室の前にたどり着く。


 春利は茶道部の入り口の鍵を指先でクルクル回していた。


「昨日、テレビゲームのやり過ぎで眠いの」


 茶道の部室は畳になっており、春利は昼寝がしたいらしい。


「えへへ、菜奈さんに膝枕を頼みたいな……」


 春利の誘いに、私は鼻血が出そうなくらい歓喜に浸る。


「喜んで、春利さん」


 私が正座をして畳の上に座ると。春利は嬉しそうに頭を乗せる。すると、春利のシャンプーの甘い香りに心が踊り、私は胸が熱くなる。


 いつの間にか、春利はスース―と寝息を立てて眠りにつく。ここは春利の髪をナデナデしてあげよう。


 私が春利の髪をナデナデすると。


「むにゃむにゃ、もう、食べられないよ……」


 春利が不意の寝言を発する。私は驚くが、直ぐに心は再び穏やかになる。


 その後は時間があっという間に流れて行く。


 そう、これが愛する人に必要にされている幸福なのかと実感する。


 昼休みまでの三限の時間は綺麗な花が咲いた気分であった。

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