曖昧な返答

今日は外に出たくなかったのに出てしまっていた。それも嫌な記憶と共に。

「傘入れてあげようか。それか私が入っていい。」

その言葉が背中をゆっくりとさすった。

「あるからいい。そういう事はほかにあたってくれ。」

「なんだ釣れない。昔だったら違かったよね。」

色々と思い出して嫌になっていた。隣にいられると調子が狂うというかなんというか。過去を思い出したがっているのかと思ったがそれだったらわざわざ会う事はないし無理やりでも断られていても無神経なので自分から仕掛けてくるだろう。そう考えていると怖くなった。傘の雨がはじく音だけが聞こえる音になった。

「着いたよ。ここでちょっとお茶でも。」

何か言われる雰囲気だと察して逃げたかったが店に歩を進めていた。店に入り注文をして待っていた。

「何がしたいの紫苑。」

埒が明かないので直接聞くことにした。

「そうだね。分からないや。私も分からない。もしかしたら構ってほしいだけなのかもしれないし懐かしいものに触れたいだけなのかもしれないしまた違った事を求めているかもしれない事もあるから。」

そいうやって昔のように答えをあいまいにしていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る