【ASMR】義理の兄と二人暮らしのイラストレーターな私、売れっ子作家からの依頼がまさかの身体目当て!? ムカついたので配信で反撃します!

楽園

第1話 専属イラストレーターになった私と、少しだけ変わった距離感

//SE 扉が開く音


「おにいちゃん、やったよ!」


//SE 玄関で靴を脱ぐ音

   足音(廊下を走る音)

   足音(階段をかけあがる音)

   扉が開く音


「違うよ。なれたのは漫画家じゃなくて、イラストレーター」


//SE 胸を軽く叩く音


「えーっ、もっと褒めてよ。そりゃ瑠夏は漫画家になりたかったけど、イラストレーターだって凄いんだから」


「漫画原稿持って行って、なんでイラストレーターになるんだよって」


「それはね、あの鈴木亮に認められたから。あの小説『ふたりは名探偵』の鈴木亮だよ」//得意げに


//SE ベッドに勢いよく座る音


「壊れたらどうするんだって? その時は弁償するってば」


(耳に口を近づけて、ひそひそと)

「なんてったって、売れっ子小説家の専属イラストレーターだよ」//得意げに


「邪な理由で近づいてきたんじゃないかって? それはないってば」


「あの超有名小説家だよ。私なんて、たいして可愛くないし、そんな目で見られてるわけないよ」


「……えっ、可愛いって……嘘。今まで一度も言ったことなかったよね」


「兄が妹を褒めたらシスコンだろって」


(大きく伸びをする)


「家族を事故で亡くして、施設にいた私を引き取りたいって言ってくれた」

「嫌がる私を必死で慰めて、外に出る楽しさを教えてくれた」


(耳に口を近づけて)

「彰人お兄ちゃんが、私の全てだよ」//優しい声で


「からかうなって? からかってないってば」


//SE 遠くから蝉の声


「走って帰ってきたから、汗かいちゃった」


//SE 上着を脱ぐ衣擦れの音


「ちょっ、待って! どうしてって、兄妹なんだからいいじゃん」


「……わたしね。漫画家になれたら言いたいことがあったんだ。実はお兄ちゃんのこと……」


「とにかく服を着ろって? ちょっと冷房強めないでよ」


「分かったよ。着ればいいんでしょ」


//SE 服を着る音


「ほら、これでいいでしょ。こっちだって服を脱ぐには少し覚悟いるんだから」


「いや、そうじゃなくて……もういい」


「そうだ、お兄ちゃんの夢を叶える手伝いがしたい。お金はないけど、できることなら何でも」


//SE 机を開ける音


「えっ、漫画を描いてみたいって? 本気?」


「教えないわけじゃないけど……お兄ちゃんは勉強もスポーツもできるし、無理して描かなくても」


「……これ、お兄ちゃんの絵? なんていうか、味があるね」


「上手いって? うーん、初めて私が描いた絵と同じくらいかな」


「初めてっていつかって? 三歳かな」


「落ち込まないでよ。今日は付き合ってあげるから」


(下手な絵の隣に、さっと絵を描く)


「すごいって? そりゃこれで食べて行きたいと思ってるんだから」


「さっと描けるようになるには? そうだな……死ぬ気で一年描けばまともにはなるよ」


//SE ページをめくる音


「まずは模写からやってみよう」


「模写って何って? 好きな絵を真似ることだよ」


「作家さんによってはデッサンだの人体模型だの言うけど、続かないなら模写で十分」


「私? 一年くらいはずっと模写してたな」


「そっくりにならないかって? 大丈夫。癖は出るから」

「で、好きな絵って誰の?」


(口に手をあてて驚いたように)

「えっ、私!?」


「照れるなあ……じゃあ私の絵を持ってくるね」


「違うって? じゃあ何?」


「私の絵じゃなくて、私が好きって……えっ、ちょっと待って、それ冗談……だよね?」


//SE 大きくため息


「お兄ちゃん、それ冗談で言うことじゃないよ」


//SE ベッドから立ち上がる音


「私、行く。そういう冗談、大っ嫌いだから」


//SE 扉が開く音、すぐに大きな音で閉まる


「お兄ちゃんのバカ……ちょっと本気にしちゃったじゃない」




 ――――――


こえけん用のため、音声化を意識した作品です。

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