第31話 恐怖
しくじった。
俺は目が覚めた直後にそう思った。
偽神の超能力者だからといって、慢心した結果、捕らえるはずが逆に捕らえられてしまった。
しかし一番気になっているのは、超能力を発動できなくなる力である。
あの力があればこの世界でも最強になるだけの力を手に入れられると考えてしまう。
そのような事を考えていると、声がした。
「あーあ、しくじった」
その声は真理の声であった。
俺はそんな様子の少女に言う。
「気楽なもんだな」
「怖くないのか?」
その言葉に真理は答える。
「それはあんたも同じ」
「私と同じで根拠のない自信があるんじゃないの?」
当たりである。
実際この状況もなんとかする事が出きる自信はある。
しかしこいつは拠点に侵入する前に超能力が使えないと言っていた。
なおさらどこから自信が湧くのやら。
そのように考えた俺は真理に言う。
「超能力が使えないのにか?」
その言葉に真理は答える。
「それは私の超能力の発動条件が厳しいからであって、いつもなら使える」
「それに沙海ちゃんが助けに来るから」
沙海、確か学園長室でも、その名前を言っていた。
「沙海ちゃんは、私の幼なじみなの」
「昔から、私がピンチの時、助けに来てくれる」
「だから今回も助けてくれるのよ」
自信満々に言っているが、その手が震えて、手に繋がれている鎖が時おり、じゃらっと鳴る。
おそらくピンチと言っても、ここまでのピンチは初めてなのかもしれない。
そのように俺が考えていると、足音が聞こえる。
音の反響で、その足音はよく聞こえる。
その主が現れる。
そいつは、赤いローブに仮面をつけた容姿である。
経験上、革命軍の幹部程度と言ったところだろうか。
そして、そいつは俺たちを交互に見ながら、
顎に手を当て独り言のように言う。
「ふむ……これが噂の……」
「直接目にするのは、初めてですねぇ」
そいつは俺たちの入っている牢屋に入り、続ける。
「私たちの中でも噂になっているのですよ」
「私達にとって更なる驚異が現れたと」
「しかし、ここまであっさり捕まってくれるとはね!」
その言葉をいい終えると共に、そいつは俺の腹に重い蹴りを入れる。
俺はそれに耐え、そいつを睨み付ける。
それが気に入らなかったのか。
そいつは俺の眼前まで近づいて来ると、かがんで俺の顔を覗き込む。
どうやら、俺だけに注意を引けたようだ。
俺がそのように思っていると、そいつは珍しそうに言う。
「ほう、恐れを抱かないのですか?」
「どんな超能力者でも、超能力を使えなければただの弱者」
「超能力者と言えど、たかが人間」
「このような状況で、恐れを抱かない者は、なかなかいないでしょう」
「さすが、偽神の超能力者?ですねぇ」
そのようにそいつが言うと共に放った拳により殴られる。
超能力を使えなくなっている俺は、その脆弱な体に受けた衝撃によって、意識を失うのだった。
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