第24話 記録の番人
扉の向こうは、白い空間だった。 何もないようで、すべてがある。記録の残滓が、空気の粒子のように漂っている。
「ここが……神域の中」
カイが言った。
「記録の番人がいる場所」
「番人って、誰なの?」
レナが首を傾げる。レナの問いに。センセーが答えた。
「記録されなかった感情を“守る”存在。人ではない。記録そのものが、意志を持った形だ」
そのとき、空間が揺れた。 白い霧の中から、影が現れる。
「……来た」
ミコがぬいぐるみをぎゅっと抱きしめた。震えるミコの肩を、ライが優しく包む。
現れたのは、三体の番人。 それぞれが、異なる姿をしていた。
一体目は、仮面をつけた少女。仮面には、涙の模様。「私は“悲しみ”の番人」
二体目は、鎧を纏った巨人。その拳は、震えていた。「私は“怒り”の番人」
三体目は、透明な存在。輪郭が曖昧で、声だけが響く。「私は“孤独”の番人」
「……感情そのものが、番人になってるのか」
レンが呟いた。
「お前たちが開いた記録は、まだ“受け止められていない”」
仮面の少女が言う。
「だから、試す。お前たちが、記録を“抱ける”かどうか」
「試すって……どういうこと?」
レナが一歩前に出る。
「それぞれの番人が、“記録の断片”を見せる。お前たちが、それに触れ、壊れずにいられるか。それが、鍵」
「つまり、感情の試練ってこと?」
カイが言った。センセーが静かに頷いた。
「記録は、ただ見るだけじゃ意味がない。“感じて”、それでも前に進めるかどうか。それが、記録の本質だ」
レンは、番人たちを見た。
「俺が、全部受け止める」
「それは傲慢だ」
怒りの番人が言った。
「感情は、分け合うもの。独りで背負えば、潰れる」
「……じゃあ、みんなで受け止める」
レンが言った。その言葉に、番人たちが静かに頷いた。
「ならば――始めよう。記録の試練を」
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