【祝 570PV突破!】バカ騒ぎ、時々世界崩壊。

まな板の上のうさぎ

第一章 笑顔の呪いと記憶の歪み

第1話 笑ってる場合じゃねぇ。

朝の神影学園は、いつも通りバカ騒ぎだった。


校門前じゃ、炎と氷の異能バトルが繰り広げられてて、制服は焦げるわ地面は凍るわで、もはや戦場。

教師たちは止める気ゼロ。むしろ賭けてる。あの人たち、ほんとに教育者か?


「……朝から元気だなぁ」


俺はネクタイを片手で締めながら、苦笑いした。遅刻ギリギリ。走れば間に合う。でも、走らない。だって俺の異能は〈感情強化〉。笑えば笑うほど、強くなる。 遅刻すれば、笑えるだろ、少しぐらいは。

だから、今日も笑っていく。無理してでも。


「よっしゃ、今日もバカ騒ぎして、世界救うか」


教室に入った瞬間、騒音の嵐が俺を迎えた。


「レン! 昨日の宿題、見せてくれ!」

「お前またパンツ逆じゃね!?」

「先生が爆発したぞ!」


……うん、いつも通りだな。

俺は笑いながら席に着く。ツッコミ入れて、ボケかまして、教師に怒られて、また笑う。


「空木、お前はいつもふざけてるな」


センセーの言葉に、俺は肩をすくめて返す。


「ふざけてません。笑ってるだけっす」


笑ってなきゃ強くなれねーの。だったら誰でも笑うだろ。


昼休み。屋上。フェンスにもたれて空を見上げる。手には古びた写真。妹が写ってる。笑顔のまま、もう動かない。


「今日も笑えたよ。……ちゃんと、守れてるかな」


風が吹き、髪が揺れる。誰にも見せない、静かな笑顔。俺だけの、約束の笑顔。そのときだった。爆音が轟き、校庭が黒い霧に包まれる。何かが、来た。何者かが。

異形の影が、霧の中から現れる。人間の形をしてるけど、何かが違う。制服じゃ無い。顔も見えない。異能の気配だけが、異常に濃い。生徒の馬鹿騒ぎとか言うものじゃ無い。


「生徒は逃げろ! 戦える者は前へ!」


教師の声が響く。俺は笑いながら前に出た。心臓がバクバクしてる。怖い。でも、笑う。怖いからこそ、笑う。笑ってれば、戦闘能力上がるんだから、俺が笑ってる間は、誰も死なせねぇ。


「俺が笑ってる間は、誰も死なせねぇよ」


襲撃者が俺に向かってくる。俺は笑った。異能が発動する。空気が震え、赤い光が揺らめく。感情が力に変わる。俺の笑いが、武器になる。


「こいつ……笑いながら強くなってるのか?」


襲撃者の一人が、低く呟いた。その声が、妙に冷静で、妙に知ってるようで――


「お前も、俺たちと同じ“笑えない人間”だろ?」


その言葉に、俺の笑顔が一瞬だけ消えた。胸の奥が、ズキッと痛む。

でも、俺はまた笑った。


「……笑ってる場合じゃねぇ。笑いたくもねぇ。笑ったところで意味なんかねぇ。……でも、笑うしかねぇんだよ」


戦いが始まった。

笑いと痛みの、感情の戦争が。

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