第27話 食卓の笑顔

週末の昼下がり。

キッチンから漂う香ばしい匂いに、結衣はリビングで顔をしかめた。

「……なんか焦げ臭くない?」


覗きに行くと、健一がエプロン姿でフライパンを振っていた。

「大丈夫、大丈夫! 今日は俺が昼ご飯を作るから」

そう言いながら、焦げ目のついた野菜炒めがフライパンの端にへばりついている。


「パパ、それ本当に食べられるやつ?」

「うるさいな。失敗は成功のもとだ」


結衣が呆れ顔で皿を用意していると、美香がお腹をさすりながらやってきた。

テーブルに並んだのは、見た目はちょっと頼りない炒め物と、ぎこちなく切られたサラダ。


しかし一口食べた美香は、思わず笑顔になった。

「……おいしいじゃない」

「だろ? 俺だってやればできるんだ」


その会話に結衣もつられて笑った。

「まあ、味は思ったよりマシかも」

「おい、マシじゃなくておいしいだろ!」


家族の笑い声がリビングに響く。

いつもの食卓が、少し違って感じられた。


食後、美香は食器を片付けようと立ち上がろうとしたが、結衣がすかさず止めた。

「ママは座ってて。私とパパでやるから」

健一も頷き、ぎこちなくシンクの前に立つ。


並んで洗い物をする父娘の背中を眺めながら、美香は胸の奥が温かくなった。

──家族みんなで支え合える。

そんな未来を、少しずつ形にしていける気がしていた。

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