第4話

愛美ちゃんはハンカチで俺の涙を拭いたあと笑って言った。


「これじゃあ立場逆転だね!前世では凪君が私の涙をふいて、背中をさすってくれてたのにね!今は凪君が泣き虫になっちゃったね!これからは私が励ましてあげるからね!凪君を一番傷つけてしまったの、私だしね。ごめんなさい本当に。」


「いいよもう、謝らないで。愛美ちゃんの日記読んだら、理解できたから。復讐は生きるための糧だったもんね。こうやって会いに来てくれたから俺はもう何も望まないよ」


「なにも!?こんなピチピチな私をみて、何も望まないの!?」


愛美ちゃんは、おかしそうに笑うと俺を押して愛美ちゃんのベッドまで歩かせた。


ドンっと倒されて、セミダブルのベッドに身を沈められた俺の上に寝そべるように愛美ちゃんが全体重を預けてきた。


「あーんなヒョロヒョロだった凪君が、大人になって胸板が生まれて、肩幅もちょっとできて、腕も太くなって、見事なイケオジに変わったなんて感慨深いなあ!!!」


「…うん…そうかな?」


「キスしよ!キスしよ!」


愛美ちゃんはニコニコ笑顔で誘ってきた。

誘惑に入るのかこれは…?

部活のようなテンションでこられても。


「色気ないなあ。愛美ちゃんはもっとエロかったと思うけどな?」


「げっ!蜜柑出てた?愛美モード入れてない?でもさあ!それはしょーがないよねぇ!前世の記憶を思い出すまでは蜜柑として生きてきたからねっ!しかも体型も顔も違うんだから、あんなか弱くはなれないよね、もう!」


あははははと元気に笑った愛美ちゃんをみたら、俺までつられて笑ってしまった。

もうずいぶんと長く枯れ切っていた心が潤っていくようだった。


色気がなくたっていい。

愛美ちゃんだったらなんだっていい。


「で、さっき私がエロくないって言ったっ!?」


「うん。元気すぎるかな?でも19歳だし、それでいいと思うよ。俺は愛美ちゃんがいてくれたらそれでいいから、そーゆーことはこの先できなくてもいいし。というかあれ以来、反応しなくなったしね。」


「ガチで!?EDってこと!?こんなエロい体が目の前にあるのに、反応しないって!?あり得ないんだけど!」


愛美ちゃんはムッとした表情をするとすぐに唇をくっつけてきた。


「どうだっ!?勃ったか!?」


いや…勃たないけど…ニヤッと口端を吊り上げた愛美ちゃんが、めちゃくちゃ可愛い。

なんだろう、この感情は。難しいな。

ドキッとか心臓がキュッとはしたけど色欲ではないような…


「次は大人のキスしまーす!!」


いきなり舌を入れられて戸惑ったが、もう好きにさせようと思った。




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