第一章【イファスアの街編】

1-1_未知の始まり

数万フィートの高空を航行する飛行機の窓から、

村田俊は新たな人生の始まりを象徴するような広大な雲の海を眺めていた。

彼の眉毛にかかるほどのボサボサした黒髪の下では、

疲れと新たな冒険への期待が混在する眼差しが外の景色に釘付けになっていた。


そのとき、隣の席の男性が穏やかに声をかけてきた。

「村田君、アフリカは初めてかい?」


話しかけてきたのは佐藤さん。落ち着いた表情に、どこか旅慣れた雰囲気が漂っている。

彼も村田と同じく青年海外協力隊(JOCV)の一員で、アフリカでの経験を生かすため、この旅に参加していた。


村田は首を横に振りながら、

「いえ、アフリカは初めてです。どんな国なんですか?」

と興味津々に尋ねた。

彼の目は輝き、未知への興味と期待でいっぱいだった。


佐藤さんは微笑みを浮かべ、

「優しい人が多いし、料理も美味い、すごくいい国だよ」

と答えた。

彼の言葉は村田の心に温かい光を灯した。


「そうなんですね、楽しみです」

と村田は笑顔で返し、その笑顔は少し緊張を解している様子だった。


しかし、佐藤さんの顔が一瞬曇る。

「ただね、現地にはまだまだ厳しい現実もある。伝染病や貧困の中で命を落とす人たちを、一人でも救うために僕たちがいるんだ」

その言葉は静かだったが、鋭く村田の胸に突き刺さった。


「えぇ、そのために私も参加しました。全力でサポートします」

と村田は堅く誓い、その瞬間彼の目には新たな決意の輝きが宿った。


その瞬間だった。突然、激しい振動が機内を襲い、金属が軋むような音が響いた。


「なんだっ!」

佐藤さんの声が上ずり、辺りが騒然とする。

村田は座席の肘掛けを強く握りしめた。

心臓が跳ねるように高鳴り、冷や汗が背中を伝う。


窓の外に目を向けたが、ただ果てしない雲と青空が広がっているだけだった。

状況が全く掴めない恐怖が、体をじわじわと支配していく。


(こんな…こんなところで……!)


飛行機は急降下を始めた。

村田の目に映るのは、座席にしがみつく佐藤さんの蒼白な顔だった。


その後、激しい衝撃と共に視界がブラックアウトする。

耳鳴りの中で、村田の意識は深い闇へと吸い込まれていった。

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