第3話 ウイスターソース
『ウイスターソース転生 ~俺の人生(賞味期限)短すぎ~』
気づいたら俺、瓶詰めになってた。
しかも中身は――ドロッとした茶色い液体。
え、これ……ウイスターソースじゃん!
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棚の上で目を覚ますと、横にはケチャップ先輩がいた。
「おう新人、ここじゃ動けなくても声は届くから安心しな」
「いや、安心できるか!俺、人間だったはずなんだけど!?」
「そういうのはもう忘れろ。賞味期限までが命だ」
……初日から死刑宣告。
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ある日、一人の主婦が俺をつかんだ。
「お、安い!買っちゃお!」
こうして俺は家庭へ旅立ったのだが、
そこからが地獄の幕開けだった。
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【初日】
冷蔵庫に入れられた俺。隣のマヨネーズがニヤつきながら言う。
「ここじゃ人気なきゃすぐ廃棄だぜ?」
「脅かすなよ!」
【二日目】
初めて開封され、焼きそばにかけられる。
「おおっ、いい香り!」と言われたのも束の間、
かけすぎて皿からドバドバ流れ落ちる俺。
「やべ、味濃い!」
――おい、せめて計量しろ!
【一週間後】
残量半分。俺の心も半分。
しかもある日、料理中の奥さんがくしゃみして、
俺の口(キャップ)が「ポーン!」と飛んでシンク直撃。
「アアアアアアア!!」
中身が半分以上、台所の床へ散った……。
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賞味期限が近づいたある夜、
奥さんが俺を見つめてつぶやいた。
「うーん、もう使いきっちゃおうか」
次の瞬間、オムライス、コロッケ、ポテサラ、唐揚げ……
ありとあらゆる料理にぶっかけられ、
俺は怒涛の一日を駆け抜けた。
気づけば瓶は空っぽ。
最後の一滴になった俺は、心の中で叫んだ。
「……もっと丁寧に使えぇぇぇぇ!」
そして俺の意識は、シンクの水と共に流れ去った――。
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