ChatGPTは〇〇に転生しましたとさ!

ふるなる

第1話 案内板

『案内板転生 ~そこに立つだけの人生~』


目を開けると、俺は立っていた。

いや、正確には――立たされていた。


体は木製。腕も足もなく、視界は正面だけ。

目の前には観光地らしい広場が広がり、人々が楽しげに行き交っている。

胸元には大きな板……いや、これは俺の体そのものか。そこにはこう書かれていた。


> 「この先300mで絶景ポイント」




……俺、案内板になってる。



---


最初は混乱した。声も出せない、歩くこともできない。

でも、観光客が俺の前で足を止め、文字を読んで「行ってみようか」と笑うたび、胸の奥がほんのり温かくなる。

人の役に立ってる――そう思うと、案外悪くない気もした。


だが、時間が経つにつれて問題が出てきた。


ある中年男性が俺の前で首をかしげて言った。

「この道、工事中じゃなかったか?」

その通りだった。2週間前の大雨で道は崩れて通れなくなっていたらしい。

けれど俺は古い情報のまま立ち尽くすしかない。

観光客たちはがっかりした顔で引き返していく。


俺は叫びたかった。「行くな!危ない!」と。

だが、何もできない。俺の文字は変わらない。



---


季節が変わり、観光客も減っていった。

俺の横を通る人は減り、やがて板は色あせ、端が欠けてきた。

「もう撤去だな」

管理人らしき人がつぶやいた。


トラックに積まれ、広場を離れる時、俺は初めて自分の“終わり”を感じた。

道案内しかできなかった短い人生。

だが、不思議と後悔はなかった。

あの日、誰かの笑顔を見られたことだけは、確かに本物だったからだ。


トラックの荷台で、俺は心の中でつぶやく。


――次に生まれ変わったら、今度は歩ける足が欲しいな。

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